[バングラデシュ] 難民の基本的生活を支える安全な住まいの不足

バングラデシュ南東部の県コックスバザールには、自国を追われ、バングラデシュへ逃れてきたミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ難民が避難生活を送っており、その数はおよそ100万人を超えるとされる。

現在、コサックバザールは世界最大の難民キャンプともいわれているが、この巨大な難民キャンプは過密状態であり、難民の多くは地盤の緩い斜面に建てられた防水シートと竹でできた掘っ立て小屋などでの生活を強いられている。

コサックバザールは、モンスーンの季節には降水量が非常に高く、年はサイクロンによる洪水や土砂災害が引き起こされ壊滅的な被害を経験している。加えて、そのような環境下では、難民キャンプへのアクセスも度々遮断され、支援物資を難民のもとへ届けることが非常に困難となる。そのため、コサックバザールで暮らす難民は、ミャンマー国内での迫害から逃れて難民キャンプに辿り着いたとしても、避難先での暮らしは非常に脆弱なものであり、人々は、住居の崩落や水害、また付随的に発生する食糧不足などへの恐怖や不安と隣り合わせの日々を送っていることが報告されている。

[パキスタン] 汚染された生活水による感染や病気のリスク

パキスタンに暮らす世帯の3分の2は細菌に汚染された水を飲料水として利用している。首都のイスラマバードにはいくつかの水路が流れているが、どこもゴミであふれ汚染されているため、近所の小川を飲料水として利用するしかない。

また、第二の都市ラホールでは、この地域を流れるラビ川に、上流の数百もの工場の排水が垂れ流されている。しかし地元住民はラビ川の水を飲料水として使用しており、この川の魚を食べ、この川の水を灌漑用水として農地に引いている。その結果、ラビ川の魚の骨に重金属汚染が確認されたり、農作物の栽培には大量の農薬が使用されている。

国連によると、こうした劣悪な水質により、パキスタンに暮らす人々の間で腸チフスやコレラ、赤痢、肝炎などが蔓延しており、同国における疾病や死亡の30~40%を占める要因となっている。 パキスタンの水は汚染の問題だけでなく、水資源の枯渇の危機にも面している。

近年、人口が急増したパキスタンでは、このまま非持続可能な水利用が進めば、2025年までに水源が枯渇し、「絶対的水不足」の状態となる恐れがあると指摘されている。国内には大規模な貯水池が3か所しか存在せず、地下水の汲み上げが進行しているが、その汲み上げの地下水面はヒ素濃度が高い深さにまで迫っており、ヒ素に汚染された水を人々が利用するようになってしまう恐れがある。

[インド] 交通事故を誘発する劣悪な道路状態

インドでは、国の急成長に合わせ道路のインフラ整備も急ピッチで進められているが、その道路の舗装の質は悪く、至るところに陥没や崩落による「穴」があき、これらが原因とされる交通事故が多発している。2017年、陥没やくぼみが原因と思われる交通事故だけで、年間3,597人が命を落とし、また約25,000人が負傷している。

そうした危険な「穴」が生じる原因の一つに、インドの道路工事の技術の低さが考えられている。現在のインドではとにかく「質」より「数」を優先した道路網の整備が進められているが、知見や技術が少ないまま短期間でより多くの工事を進めようとすることで、ひとたび大雨が降ると、簡単にひび割れや穴が生じるような、耐久性に欠く質の悪い道路が作られてしまっている。

最近では女性がスクーターに乗って道路を走行中、乗っていたスクーターの車輪が道路の陥没した部分にはまり、そのままバランスを失い転倒。投げ出された女性は隣の車線を走っていたバスに轢かれて死亡する、という痛ましい事故が起きた。

また、穴そのものが原因ではなく、穴を避けようとする人間心理によっても、交通事故は起こる。ほとんどの車やバイクが転倒を避けるため、そうした陥没個所や穴を見つけると、それを避けるため急な車線変更をする。そのことが原因での衝突事故もまた、多く発生しているのだ。

[オーストラリア] プラスチックゴミによる海洋汚染

オーストラリアでは毎年300万トンのプラスチック(レジ袋、ストロー等)が製造され、その内13万トンが最終的に海に流れ着いている。実際、2016年から2017年にかけてオーストラリアの海岸沿いに流れ着いたゴミの75%はプラスチックとなっている。 流れ着くゴミ以外でも、オーストラリアでは1日で100万のレジ袋が使用されており、プラスチックゴミ削減を目指すオーストラリア政府は2018年7月よりレジ袋の使用を禁止したが、既に海に捨てられているゴミを回収する必要もある。実際、頻繁にボランティアによるゴミ拾いが行われており、2016年には260万個のプラスチックゴミが拾われたが、より効率的にプラスチックゴミを削減する対策が求められている。

[インドネシア] パーム油及びその代替品の生産による環境破壊

パーム油は化粧品、石鹸、食品等の様々な日用品の原材料であり、近年ではバイオ燃料としても利用されている、世界で最も生産されている植物油となっている。しかし、その生産には膨大な土地を必要とし、農地の確保のために多くの熱帯林が伐採され、焼き払われている。

一方、パーム油の代替品として考えられている菜種、大豆、ヒマワリ等の生産にはパーム油の最大9倍の土地を必要とし、熱帯雨林やサバンナの生物多様性が更に脅かされることになる危険性があると、国際自然保護連合(IUCN)は警告している。

パーム油に対する需要を満たしつつ、環境破壊を食い止められるような新たな解決策が求められている。

[ベネズエラ] 貧困による育児放棄や孤児の急増

ベネズエラは以前は石油大国として知られていたが、2014年の石油価格暴落に伴い、今まで石油に頼りきっていた経済が崩壊。2018年1月時点でインフレ率が1万%となっている。そのような経済状況において、日用品や食料品の価格は高騰し、基本的な生活すら立ちいかない住民が急増しており、国外に移住する人が230万人にものぼっている。そんな中、移民という手段が取れず国内で生活を続けざるを得ない貧困層の人々は、自らの子供を養うことすらできなくなり、育児放棄や養子に出す親が続出。また、他の子の食料を優先するため、「口減らし」的に年長の子供が自ら家を去らざるを得なくなり、その結果スラム街で暮らすようになるという負の連鎖が起こっている。

[ギリシャ] 森林火災時の避難を困難にする違法建築

2018年7月、ギリシャ・アテネ近郊で起きた森林火災は史上まれにみる大惨事となった。火災の中心地となったリゾート地マティでは焼失家屋2万5000棟以上。また人命被害では死亡者80名以上、行方不明者100名以上と言われている。

現地の報道によると、被害拡大の背景に指摘されるのは都市計画上の問題。森林に隣接する形で多くの家屋が建築され、道も狭いため、消防車などの接近を難しくした。また、こうした有事の際に正式な避難指示が出されず、政府の災害時の対応計画はあっても、自治体を含む連携が不十分だった可能性もある。

同国の国防相は被災地に違法建築が多かったことは被害拡大の一因だとし「法を守らない危険を理解するとき」との見解を示している。

[キューバ] 乱獲と漁業管理機能の不備による漁猟資源量の低下

キューバでは監視員・監視船・燃料がないために十分な乱獲の取り締まりが進まず、沿岸の漁業資源量が低下している。これを受けて、1985年には1人当たり20.48kgだった水産物消費量が、2013年には5.57kgと4分の1に減少した。 また、漁獲高を把握したり、売買記録を管理する体制が整備されていないことも漁業資源量低下の原因となっている。キューバでは、個人で操業する漁師と「パラダール」と呼ばれる個人経営レストランの間で直接、魚が取引されることが多いのがその原因。

[ミャンマー] 中央乾燥地域での深刻な安全な水へのアクセス

ミャンマーの総人口の約30%に当たる1,200万人が中央乾燥地域に住んでいるが、この地域の年間降雨量は400~800mmと非常に少なく、その多くが雨期の5~10月に集中している。この地域の住民は、乾期の生活用水を溜池や地下水に依存しているが、水源が枯渇したり、水質が悪化していることも多く、安全な水を求めて、女性や子供が水汲みのために数kmも往復しなければいけない。 2001年には、中央乾燥地域で安全な水にアクセスできない村は8,042カ所あった。日本のODAによる井戸掘削技術の移転や資機材の投入などによって、この数は大幅に改善されたが、2015年時点で、まだ1,711の村が安全な水にアクセスできていない。

[インド] 世界遺産タージ・マハルにも及ぶ都市の環境汚染

近年、インドにおける大気汚染が深刻化している。世界保健機関 (WHO)の報告書によれば、世界で最も大気汚染が深刻な14の都市はいずれもインドにある。工場のばい煙、街中の道路で渋滞する自動車の排ガス、また未舗装道路で土埃が大量に舞うことが原因で、インドの街はしばしばスモッグに覆われる。インドの大気汚染による人への健康被害も多数報告されており、現地では病院が呼吸器疾患や肺がんの患者であふれかえっている。
タージ・マハルのあるインド北部のアグラは世界第8位の大気汚染都市である。タージ・マハルは大気汚染だけでなく、隣接する川の汚染や、無秩序な建設ラッシュによる帯水層の沈下など様々な問題に直面している。イスラム建築代表の、タージ・マハルの美しい白い大理石が近年黄色や緑色に変色してしまっている。これは、大気中に含まれる有害な粒子や、隣接するヤムナ川に下水や産業廃棄物、家庭ごみなどが垂れ流され、そこに繁殖した昆虫の糞による影響である。
インドは、人々の健康だけでなく、自らの国を代表する世界遺産タージ・マハルの美しさを脅かすほどの環境問題を抱えている。