[ブラジル] 財政難による治安体制不全により脅かされる女性達の安全

貧困や人権問題に取り組むNGOアクションエイド(ActionAid)が2019年1月に発表した調査結果によると、14~21歳のブラジル人女性の53%は毎日何らかの「嫌がらせ」を受けることへの恐怖を抱えながら暮らしているという。同団体によれば、嫌がらせの恐怖を抱える若年女性の割合は、調査対象となったケニア24%、インド16%、英国14%の4カ国と比べてブラジルが圧倒的に高い。

ブラジルの大都市の中でも、特にリオデジャネイロの治安悪化は深刻さを増している。治安悪化の最大の要因は、州財政の悪化だ。五輪のための多額のインフラ投資により、基礎的財政収支は12年から赤字に転落。16年までの不況で企業からの税収も急減。予算不足により警察官への給料遅配が常態化し、治安を守るべき警官等はストライキで対抗。またパトカーなど治安維持のための重要な装備や備品の故障や欠品も続出し、公共の安全を守る体制が非常に不安定なものとなっている。

2019年5月のThe Rio Timesの記事によれば、ブラジル、リオデジャネイロでの女性に対する暴力犯罪は4573件。そしてそのうちの70%のケースで、被害者が17歳未満の少女達だったという。高まる社会不安が少女達という弱者への暴力に転嫁されているのだ。

犯罪を未然に防ぐための仕組み、非人間的な犯罪行為から少女や女性を守るための仕組み、そして、万が一被害にあってしまった女性たちに対して、温かい心身のケアや社会復帰支援を施すための仕組みが求められている。

[ブラジル] 鉱山ダム決壊による深刻な環境破壊問題

2019年1月25日、ブラジル南東部ミナスジェライス(Minas Gerais)州ブルマジーニョ(Brumadinho)近郊で発生した鉱山ダム決壊事故は、未曾有の被害をもたらした。2月の報道では死者180人近く、行方不明者131人とされる。

また、この決壊により鉱物を含む泥流による広範な地域への環境汚染が心配されている。当局の調査によると、パラオペバ川の下流、120㎞にもわたり、鉛やクロムなどの有毒金属類を含む泥流が大量に流れ込み、川沿いの自然環境や住民生活に影響を及ぼしているという。当局は当該の地域住民に、川の水の飲用、酪農や農業への使用を控えるよう注意を呼び掛けている。

ダム決壊の原因は建設コスト削減などによる欠陥構造によるものとの見方もあり、従業員や周辺地域の住民に対する安全確保意識の欠如、重金属を含んだ土砂が大量に流出することによる環境への影響の重大さなど、同ダムの保有者である鉄鉱石世界最大手ヴァーレ社の企業モラルに対する批判が高まっている。

同社の鉱山ダムでは3年前にも同様の事故が起こっており、また今年5月にはバロージコカイス(Barao dos Cocais)にある同社の別のダムについても「いつでも崩壊の危険がある」との発表がなされ、同地域住民の不安が高まっている。

鉄鉱石が国の重要産業の一つであるブラジルにおいて、その産業が周辺地域の人々や環境と共存共栄するためにも、こうした災害を二度と繰り返させないための具体的な解決策が求められている。

[リベリア] 盗電の横行により更に遅れる電気インフラ整備

リベリアでは1989年から14年続いた内戦により、国内の発電・送電の設備が激しく破壊された。政府は、その後の経済発展をさらに押し進めるべく、現在電力供給インフラを修復し、新しい設備の敷設を進めようとしている。

政府は2030年までに首都モンロビアの70%以上の世帯に電気が普及することを目指しているものの、内戦での破壊や老朽化によって現在使われている配電設備は、損傷も激しく機能していないものも多い。そうした設備の刷新を早急に進めるためにも、十分な資本を得ることが急務となっているが、電気料金を徴収できない問題に直面し、資金調達が難しくなっている。

一番の原因は市民による違法な電力使用、つまり「盗電」の横行である。

メディアの調査によれば、リベリアで電力会社が送電する電気のおよそ60%が「違法に盗まれている」との見方もある。電気料金をまともに回収できない電力会社は、いくら電力を供給してもひたすら赤字となり、コストを回収することが出来ず、また設備刷新のための資金も得られない。送電設備の整備が進まず、ますます電力化が遅れる、という悪循環に陥っている。

電気代を正しく徴収できるようになること、盗電を助長しないことや防ぐこと、または安価な送電設備や供給のためのアイデアなど、様々な解決策が求められている。

[インド] 宗教や因習により改善が進まないトイレの設置

インドでは国民の半数以上、つまり6億以上の人々が昔から続く屋外排泄の習慣をいまだに続けている。このことにより不衛生による感染症の拡大、女性に対する犯罪の助長など、数々の深刻な社会問題が引き起こされている。この屋外排泄習慣の是正を最大の課題の一つとするモディ首相の主導の下、国内外からの支援によってここ数年急ピッチで公衆トイレの設置が進められている。だが、トイレの実際の利用率は上がっておらず、いまだに屋外排泄を続ける人が多いのが現状である。

特に言われているのは宗教による価値観の問題である。同じインド国民でも、特にイスラム教徒よりヒンズー教徒のほうが、屋外排泄を好むと言われている。かれらは、仮に自分の家に使えるトイレが設置されていたとしても、敢えて屋外排泄を選ぶ傾向があると言われている。これにはいくつか理由がある。一つはヒンズー教徒には「浄」と「不浄」の概念があり排泄は「不浄」。それを自分のいる場所(家)からは、できるだけ遠ざけたいという心理があるらしい。また、トイレのメンテナンスや維持管理は「不浄なこと」の一部であり、それをやるのは「カースト制度の下層の人々」という社会認識が根強い。トイレそのものに関わることを忌み嫌う傾向があるのだ。

そうした人々の意識もあり、国の政策でその地域に公衆トイレが設置されても、それを維持管理する人がいない。また自治体がそれを管理するための仕組みやルールを整えないことから、一部のトイレは上下水道の整備もなく全く使えないものであったり、大雨の際にタンクに溜まった汚物があふれ出て汚染被害がでる等、持続可能な形での利用がされていない状態となっている。結果、トイレとして設置したはずの建物を、近隣の農民が農具や燃料(牛糞)の保管場所として使うなど、本来の目的を全く果たしていない状況となっている。

問題の背景、そして人々の文化や価値観をきちんと理解し考慮したうえでの、持続可能な解決策の考案が求められている。

[メキシコ] 人口過密都市から追い出された貧困層の劣悪な住環境

メキシコの首都メキシコシティでは人口過密により土地価格が高騰し、収入の低い貧困層の人々は街を出ざるを得ない状況となっている。

国の都市計画に則った圏内の住宅地に住居を構えられない彼らは、郊外に出ていかざるを得ない。例えば同国政府の定義で「都市計画対象外」地区にあたるラ・クエスタには2000年以降、そうした貧困層の住民が増え続けている。しかし、そのような地域に上下水道や電気などのインフラが整備されることはない。特にその地区には地下に石油パイプラインも通っており安易に地下を掘って工事をするということもできない。

また、住居自体も自らの手で廃材や段ボールを用いて作った非常に簡素で脆弱な家屋であり、住まいとしての基本的な設備や空間条件を満たしていないものが多い。

また、貧困層は同居する家族の人数が多い傾向があるが、まともな住宅建材なしには大きな建物は作れず、極めて狭小なスペースを大人数で共有しなければならず、精神衛生的な害も受けやすい環境となっている。なお1部屋に2人以上で住むメキシコ国民は約3400万人にも上ると言われており、都市ではその比率が更に高い。

簡素な作りで、なおかる極狭小スペースでの大家族の生活は、家族一人一人のプライバシーを保つこともできず、互いにストレスを抱え、フラストレーションを為、子供たちの家出や放蕩を招き、ひいては非行に走らせる要因にもなりかねない。

都市部に住む低所得層が健康的な生活を送るための最低限の条件を備えた住環境が求められている。

[ミャンマー] 都市住民の防災知識の低さによる火災被害拡大の危険性

ミャンマーのヤンゴン市では人口の急増により様々な問題が発生しているが、中でも人口密集地の火災の危険性に対する住民の意識の低さが問題視されている。

2018年9月、Maha Bandoola Gardenストリートで起こったホテル火災では子供を含む14名の宿泊客が屋上に追いやられ煙による一酸化炭素中毒により病院に搬送される事態となった。

また、様々な有害廃棄物が処理されるHtein Bin廃棄物処理場において、同年4月に起こった大規模火災は、約5日間も続き、都市の一部が有害煙にすっぽりと覆われ住民の健康への影響が懸念された。

ヤンゴンは、急速に発展する都市と裏腹に火災に対する法律はまだ未整備な部分が多く、また、防火や防災に対する住民の知識、意識も未発達な状態である。例えば人々は自分の家の中に消火器を置く意味をよく理解していない。また、住民の警察に対する不信感によるものなのか、火事を出すことで警察からの事情聴取を受けるのを嫌がる心理があるらしく、たとえ火が出ても、小さい出火ならすぐに通報せず、まずは自分で何とかしようとする傾向があるという。当然、火の手が大きくなると自分の手には負えなくなり、その段階では大規模火災の可能性を孕むような非常に危険な状態に陥るのだ。

都市における火災の恐ろしさ、防災意識の重要性を周知するため、火災発生時の正しい対処法や避難の仕方など、被害を未然にまたは最小限に食い止めるための知識に関する教育や情報共有の仕組みが必要とされている。

[インドネシア]地震多発国における災害予知システムの老朽化及び不備による被害拡大

2018年9月末に起こったインドネシア・スラウェシ島地震では、大地震および津波により死者2千人超、損壊家屋約6万7千軒、避難住民8万7千人以上(2018年10月時点)という甚大な被害となった。

被害拡大の原因の一つは、インドネシアの当該地域で設置された地震予知・警報システムの故障や不備などであったことが後日判明。この、2008年に税金や他国からの支援を受けて設置された地震予測のための計器やシステム(地震計、津波計測ブイ、検潮器等)は、地殻変動や潮位変化の情報を迅速に集め、緊急体制を敷いたり、住民への緊急警報を発するためのものであったが、それらのほとんどが全く機能していなかった、と報道されている。

また、このシステムの故障や動作不備に加え、住民の中には「ツナミ」という言葉すら知らない人がいるなど、地震大国インドネシアにおいて、地震や自然災害に対する国民の予備知識レベルが低いことも対応の遅れを招き、被害を拡大した一因として問題視されている。

地震による被害をできる限り最小限に抑えるため、防災システムの維持管理の方法、また、住民の災害に対する意識や知識のレベルを上げるような工夫、解決策が求められている。

[ミャンマー] 都市の人口急増に伴う家庭ごみの路上投棄の増加

ミャンマーの都市ヤンゴンでは人口の急増につれて家庭ゴミの量が増しており、モラルの無い住民による街路へのゴミ不法廃棄が深刻な問題となっている。

同都市では数年前から取り上げられている問題だが、増える人口とゴミの量に対して対策が追い付いていないのが現状。今年2018年6月には、モンスーンによる豪雨により路上に投棄された大量のゴミが押し流され、排水溝の一ヵ所に集中し水の流れをふさいだため、都市住宅街が浸水被害にあうという事態も起こっている。

同市の環境保護清掃局によれば、近年ヤンゴンで生まれるゴミの量は全体では一日当たり2387トン、住民一人あたり0.6キロの計算となり、10年前の約2倍の量になるとのこと。現在、同市清掃局が回収処理できるゴミの量は一日当たり2057トン。つまり毎日約300トンのごみが回収できないままで、路上や水路に不法投棄されていると見られている。

[インド] 三輪タクシー「リキシャ」運転手の貧困と健康被害

インドには600万台の三輪車タクシー「リキシャ」があり、1,200万人のドライバーがいるが、中には1日で400円程しか稼げず、家計を支えられずホームレスになってしまう人もいる。しかし、多くの運転手はリキシャをレンタルしており、レンタル代を支払う為に手取りが少なくなるが、リキシャをレンタルできないと収入を得られないという悪循環に陥っている。

また、世界保健機関(WHO)が発表した世界で最も大気汚染が深刻な14の都市は全てインドにあり、リキシャの運転手は常にマスクを着用しながら働いていても健康に悪影響を及ぼしている。特に、リキシャには圧縮天然ガス(CNG: Compressed Natural Gas)で動く種類と、運転手が自らペダルを漕ぐ種類がありるが、ペダル型の運転手は肺活量が多くなり、PM2.5が肺や血液に入り込み、特に健康被害が深刻になっている。

BBCが行ったインタビューに対し一人のリキシャ運転手はこう答えている。

「私は1日で約300ルピー稼いでいますが、その一部を自身の食料に使い残りは妻と二人の子供の為に貯金しています。家計は私が支えないといけないので、例え息をするのが苦しくても働き続けなればいけません」

以下原文:

“I earn around 300 rupees ($4 ;£3) a day and spend some of that on buying food and save the rest for my wife and two children. My family depends on me, so I have to keep working – even if I am struggling to breathe” 

[サハラ以南アフリカ] 男子の8割台にとどまる女子の中等教育就学率

世界において、初等教育の就学率は男子が91%、女子が89%と、男女格差は減ってきている。しかし中等教育(中学・高校)においては、男女格差が依然として存在しており、とくにサハラ以南アフリカでは、男子を100とすると女子の就学率はまだ87%にとどまっている。

女子の中等教育への就学を阻んでいるのは、例えば「女性は教育を受けるべきではない」「家事をするのに教育は必要ない」「女の子は早く結婚して家を守るべきだ」といった女子に対する伝統や宗教による差別、偏見などの要因がある。

親が経済的に余裕がなく、なおかつ多くの子供がいる場合、まずは男の子を優先的に学校へ通わせようとする文化傾向もある。

また、教育施設の問題として、例えば「そもそも学校に女子トイレがない」ことや、「学校までが道のりが遠く、女子生徒を通わせるのが危険」などの問題も挙げられている。