[フィリピン] 都市の発展と人々の経済活動を阻む深刻な交通渋滞

2019年9月発表のアジア開発銀行(ADB)による報告書では、アジア諸国における人口500万人以上の278都市のうち、フィリピンのマニラが最も交通渋滞の深刻な都市に選ばれた。

都市への急激な人口流入に伴い、年々増加する通勤・通学者の数。これに対し、彼らの移動を支えられるような効率的で経済的な公共交通機関の整備が追い付いていないためである。

例えば同都市の幹線道路であるEDSA通りには47のバスターミナル、17の商業施設、そして多くの企業オフィスや教育機関が集まっており、1日当たり40万以上の車両がその道路に集中することから、毎日のように朝から晩まで深刻な交通渋滞が発生している。

BBCも、この交通渋滞に対するフィリピン政府の対応の悪さを示す記事を掲載。“フィリピン大統領の広報官は「早くその場所に着きたいのなら早く出発すればよい」という無神経な発言をし「現実を全く理解していない」と国民から非難を受けている。都市部の住民の一人はBBCの取材に対し「子供達も、片道3時間という長時間の通学を強いられている」と状況の深刻さを訴えている。さらに追い打ちをかける如く、最近になって主要な鉄道の3路線が故障する事態となり、道路渋滞を更に悪化させるトラブルにも見舞われた”などと報道している。

交通インフラ整備の遅れは、大人のみならず都市部に通学する子供達にも精神的、身体的な苦痛を強いており、ひいては国や社会の健全な発展を脅かしている。

ちなみに今回のADBの調査は、人口500万人以上のアジアの278都市を対象にGoogle Mapを用いて交通所要時間を算出しているが、マニラに続き2位以下の都市は、以下の通りとなっている。

2位クアラルンプール(マレーシア)/3位ヤンゴン(ミャンマー)/4位ダッカ(バングラデシュ)/5位バンガロール(インド)/6位ハノイ(ベトナム)/7位コルカタ(インド)/8位デリー(インド)/9位プネ(インド)/10位ホーチミン(ベトナム)

人々に時間、経済、体力的な負担を強いる過酷な都市の道路渋滞を解消するため、ひいては都市の健全な発展のためにも、道路事情の改善と質の高い交通インフラの整備につながるための解決策が早急に必要とされている。

[南太平洋] 美しい島々が犠牲となる全世界のプラスティック廃棄の問題

南太平洋にある絶海の孤島。そこに世界中から排出されたプラスチックごみが漂着し、美しい浜辺を「ゴミ溜め」のように覆いつくしている。科学者等は、世界中で使い捨てプラスチック製品を使う習慣が続く限り、美しい島々を救う手立てはないと訴える。

南太平洋に浮かぶヘンダーソン島。英国領の環礁でニュージーランドの岸辺から5500㎞も離れた位置にある絶海の孤島。しかしそのような島が海洋プラスチックごみ汚染の最もひどい場所の一つとなっている。この島だけでなく、今、世界各国が出す海洋プラスチック汚染の大部分が、こうした南太平洋の島々に世界的にも最悪の被害を引き起こしていると言われる。

今年6月、調査のためこの島を訪れた海洋科学者Jennifer Lavers氏によれば、「ボトルや容器、釣道具の一部」などがドイツ、カナダ、米国、チリ、アルゼンチン、エクアドル等、世界のあらゆる国々から漂着しているという。同氏が2015年、この島に初めて調査のため訪れた際、East Beachと呼ばれる浜辺では1メートル四方当たり約700個のプラスチックごみがあることがわかった。この数字は世界でも最悪レベルの密度だとという。この島が、南太平洋環流(South Pacific Gyre)の中心に位置するのだが、その強い海流が世界中の漂流ゴミをこの島のある地域に運んでくるのだという。

最近再び調査した際、同氏は清掃活動を企画。チームに分かれて約2週間にも渡り清掃活動を展開。浜辺からプラスチックごみ約6トンが回収された。しかしそのような膨大な労力を費やしてもなお、清掃したはずのその場所にはまたすぐに新しいゴミが漂着する。それを目の当たりにし悲痛な思いであったという。

2019年8月ツバルで行われたPacific Islands Forum (太平洋諸島フォーラム )では、そのような島々を持つ太平洋諸国のリーダーたちが、改めて世界に向けてプラスティックゴミ問題の危機的状況について、警告を発した。WWF(世界自然保護基金)の関係者は「こうした太平洋の島々は世界から見れば地域としては小さいかもしれません。しかしリーダーがこの場で世界に向けて送ったメッセージは明白です。プラスチック汚染は世界の全ての国々にとって、重大な問題なのです。」「世界規模の問題であるからこそ、世界規模での解決策が求められている。そして具体的で実践的な対策を世界レベルでいますぐ行動に移す必要があるのです」とコメントしている。

今や「待ったなし」の状況であるプラスティック廃棄物による環境汚染問題。課題を解決するための具体的なソリューションが、緊急で求められている。

[アフガニスタン] 異常気象による水害による農業壊滅、限界に達した食糧状況

反政府勢力や、過激派組織の勢力が衰えずいまだに戦火が絶えないアフガニスタン。そこでは政情不安による不安定な生活に加え、異常気象による干ばつ、数十年に一度の大洪水などが発生し、主要産業である農業に深刻な打撃を与えている。人々は国内避難民と化し、安定した生活が営めず、また、生活のために武装組織に加わるなど、負の連鎖が続いている。

人口約3600万人のアフガニスタンは、その約8割が農業を営むといわれている。しかしながら、この数年にわたる干ばつにより農作物の不作が続いており、また、更に追い打ちをかけるかの如く、数十年に一度といわれるような大規模な洪水が毎年のように発生。その度に農地が流され作物が取れず、経済的な大ダメージを与えている。また、洪水により井戸や水源が汚染され、感染症などによって、人々の健康が脅かされる状況となっている。

FAO(国連食糧農業機関)のアフガニスタン事務所代表Rajendra Aryal氏は「人々は既に貧困に陥っている。もし今年の収穫が不作となった場合、本当に最悪の事態になることが予想される」と云う。また国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、830万人が「危機的状況」、330万人が餓死寸前の「緊急段階」だという。

不安定な政情に加え、気候変動の影響により歴史的にも稀にみるレベルでの飢餓状態にあるアフガニスタン。この国の人々の命を救うための有効な策が、今、緊急で求められている。

[ソロモン諸島] 重油流出により懸念される世界遺産サンゴ礁と周辺の生態系への影響

2019年2月、南太平洋のソロモン諸島で貨物船が座礁し、重油が大量に流出したことで、世界遺産に登録されたサンゴ礁や周辺環境を脅かす事態となっている。

CNNの報道によれば、2月5日にカンガバ湾で座礁した貨物船「ソロモン・トレーダー」が座礁した際、燃料用の重油が700トン以上あり、その時以来、同船からは重油が流出し続けているという。同メディア系列のラジオNZによれば、これまでに流出した量は100トンあまりにのぼるという。

オーストラリア政府は、船内に残る約600トンの重油も流出し、海洋汚染が一層深刻化するリスクは大きいとの見方を示した。

座礁事故の現場にほど近いレンネル島は、その南部が1998年にユネスコの世界遺産に登録されており、世界で最大の隆起サンゴ礁の島。ユネスコの報告によると、流出は世界遺産のすぐ外側で発生しており、世界遺産に影響が及ぶ可能性があるほか、地元住民の生活も影響を受ける恐れがあるとのこと。

また、前述のラジオNZによると、環境への影響は既に出始めている。ソロモン諸島の災害管理当局は同局の取材に対し、死んだ魚やカニが海岸に漂着し、住民に影響が及んでいるほか、ニワトリや鳥類にも影響が出ていると語った。

美しいサンゴ礁のみならず、地域の環境や住民の健康を脅かす重油流出被害を、これ以上拡大しないための方策が求められている。

[インド] 気候変動により、更に深刻さを増す水不足問題

2019年7月現在、インド全土の4割以上が干ばつ状態となり、水不足問題はもはや国民の命の危険にまで及ぶレベルとなっている。

インド南部タミル・ナードゥ州の州都チェンナイでは、年間降水量が約半分に落ち込み、水道水としての貯水量がほぼ完全に枯渇した状況だ。同国の他の都市も同様に、自治体が持つ水源だけでは住民が生活を維持するためのニーズを満たすことができない状況となっている。

元々南アジア地域は、年間の数か月に降るモンスーンに必要な水の70%を依存している。モンスーンがその季節に恵みの雨を降らすことで、川は水をたたえ、地下には地下水が満ち、ヒマラヤ山脈は雪を頂き、その雪どけ水が人々の命の水である。しかし、逆に言えば、このモンスーンが少しでも気まぐれを興そうものなら、たちまち水不足に陥る脆弱さをもった地域なのである。

今年、インド南部の都市チェンナイでの降水量は例年より55%少ない。昨年12月のモンスーンが最後となり、その後約200日もの間、全く雨が降らない状態が続いているのだ。冬から春に季節が変わり、気温が108℉(42℃)まで上昇すると、市内の4つの貯水池では完全に干上がった地面が露わになった状態だ。2019年7月現在、市内の一部では約5か月もの間、水道がストップしており、住民等が時には夜中にまで配給の水を得るためのタンカーを引いて移動するのが日常化してしまっている。

モディ首相は、2024年までにすべてのインド国民に水道水を供給することを公約しているが、それは施設や仕組みづくりのことであり、肝心なのは、供給する「水そのもの」をどうやって手に入れるかである。

近年の気候変動により、これまで当然の如く人間が享受していた「自然の恵み」が得られなくなった今、それ以外の斬新でイノベーティブな方法でこの水不足問題を解決することが求められている。

[フィリピン] 経済成長と格差拡大により更に増える生活習慣病患者

アジアで急成長を遂げている国の一つ、フィリピン。その経済成長は、フィリピン国民の食生活にも大きな変化をもたらしている。特に、いわゆる生活習慣病患者の急増は同国の大きな社会問題となっており、早急な対応策が求められている。

世界保健機関(WHO)のレポートによると、2010~2016年にかけてフィリピンの運動不足人口の割合が15.8%から39.7%と2倍以上に増加。また生活習慣病予備軍といわれる「体重過多」(BMI値25以上)の人口の割合が24.3%から27.6%に、「肥満」(BMI値30以上)の割合が5.0%から6.4%へと、年々増加の一途をたどっている。

フィリピンがこうした問題に直面している原因として、その元々の食文化や、いまだに国民の半数を占める貧困層の食に対する経済的な余裕のなさが影響していると言われる。伝統的な食生活にそもそも野菜を食べる習慣がないことや、貧困層にとって食事の満足感が「栄養バランス」ではなく「少ない食費でよりお腹が満たされること」であり、繊維質やビタミン源となる野菜の摂取は(お腹にたまらないため)優先されず、米やイモなどの穀類が多い食事に加えて、欧米から入ってきたいわゆる甘い炭酸飲料をあわせて飲むという食生活が主流となっているのだ。また、経済成長に伴うテレビやインターネットの普及により、日常生活の運動量も低下する傾向にある。

近年の調査では、フィリピンの死因上位10位のうち、虚血性心疾患や高血圧性疾患、糖尿病など生活習慣に起因するものが増加しており、現在、同国の成人の約6.2パーセントが糖尿病と診断されているが、2040年には糖尿病患者が1200万以上に膨らむという試算もある(現在の全人口は約一億人)。

今年、University of the East Ramon Magsaysay (UERM)メモリアル・メディカル・センター内に開設された「UERM Diabetes Center」のDr. Jennifer Nailesは「我々には糖尿病を予防する策が必要です。なぜなら、この病は一度かかるとと薬で押さえることは出来ても一生治らないものだからです」という。

人々に正しい食生活と栄養摂取と健康の管理方法を伝え、生活を一変させる恐ろしい生活習慣病にかからないよう、国民の健康を守るための早急な対応策が求められている。

 

 

 

 

 

 

[ザンビア] 閉鎖鉱山の鉱滓(こうさい)による住民や子供への深刻な健康被害

アフリカ南部の国ザンビアの首都ルサカから150キロ程北にあるカブウェ市では、数十年前に閉鎖された鉛鉱山の有毒な「遺産」が、今もなお周辺地域の住民に健康被害をもたらしており、特に子供たちの知的障害や発達の遅れなどに対する懸念が高まっている。

1900年初期に操業開始し1994年に閉鎖されたカブウェの鉱山は、かつては世界最大の鉛鉱山と称された。1970年代から当時のザンビア政府によって国営化され運営されてきたものだ。

国際的な人権保護NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、かつて「カッパーベルト」と呼ばれた同地域について、その周辺地域は依然として深刻な汚染状態にあり、自宅、学校、遊び場など子供たちの居場所の周辺の土壌も高いレベルで汚染されていることで、その土に触れたり汚染土の粉塵を吸い込むことによる子供たちへの健康被害について、懸念を表明している。

現地調査の結果によると、血中鉛濃度が高い子供ほど、学習能力や発達段階を示すテストの成績が悪い傾向も示されており、鉛中毒による脳の発達への影響は、最悪の場合は脳障害にまで至るケースもあるといわれる。

既に顕在化している環境破壊や健康被害を解決し、将来更に深刻になる可能性がある周辺住民や子供たちの健康被害を防ぐための、早急な対策が求められている。

[モンゴル国] 人々に甚大な健康被害をもたらす都市の深刻な大気汚染

モンゴルの首都ウランバートル市は、インドのニューデリー、バングラデシュのダッカ、中国の北京などとともに世界で大気汚染が深刻な都市の一つ。民主化後の経済発展による都市の急激な人口集中が進むにつれ、その汚染レベルは年々酷さを増している。

世界一寒い首都といわれるウランバートル。都市の中心部に住めない貧困層は周辺地域に伝統的な住居「ゲル」をつくり居住する。そこに住む多くの人々が厳しい寒さをしのぐために燃料として利用するのが、安価な石炭や燃やせるもの全て、つまり身の回りのプラスチックゴミ等である。元々、モンゴルのいゆわる貧困層人口は150万人近くといわれ、300万人という国の全人口のほぼ半分が該当する。都市部周辺にそうした人々が居住地域が連なり、有毒なガスを出す燃料で暖を取りそれが甚大な大気汚染を起こす大きな原因の一つとなっているのだ。

世界保健機関(WHO)は、2019年2月、ウランバートルの大気汚染に関するレポートを発表。WHOが推奨する大気汚染の基準値を常態的に上回っていることに懸念を表明。また、大気汚染の最も明白な影響は呼吸器系疾患である一方、汚れた空気によって子どもがその後の人生で糖尿病や循環器疾患を発症する危険性が高くなることが研究で示唆されていること、大気汚染と白血病や行動障害との関連性を指摘している。

この問題に対処するため、2019年5月に自治体政府は石炭の燃焼に対する禁止措置が施行しているが、問題を早急に解決するためには、そうした法律の改正だけではなく、現実的かつ即効性のある解決手段が早急に求められている。

[コンゴ民主共和国] エボラ出血熱ウィルスの感染拡大を増長する諸問題

コンゴ民主共和国では、エボラ出血熱流行が宣言されて約1年が経つ2019年7月現在も、いまだに感染者が増えつづけている。

7月12日時点で発症患者2477人、死亡者は1655人を数え、流行は史上2番目の規模と云われており、また7月15日付けの国際メディア各紙は、大都市ゴマで初の症例が見つかったことで都市部での感染拡大への不安が広がっていることを伝えている。

エボラウイルスは空気感染はせず、感染者の体液や血液に触れることで感染すると云われ、感染拡大は死亡した患者の会葬時や医療器具の不足(注射器や手袋など)によって、患者の血液や体液に触れたことによるものが多いと云われる。患者の早期発見と隔離、医師による適切な治療とそのための施設、備品があれば拡大は抑えられるものと考えられる。

しかし感染拡大を加速している要因の一つに、同国民による医療機関や政府に対する不信感が挙げられている。エボラ出血熱のような症状がみられても、医療機関に行くのを拒否し、患者がそのまま自宅で死亡。そしてその会葬のために死者の体に触れた家族や周囲の人間が感染し、ウィルス感染者が増えるという悪循環が起こっている。また、宗教的、感傷的な理由から、死んだ家族を感染死亡者専用の埋葬地に埋めたくないとして、家族が遺体引き渡しを拒み、ウィルス除染活動の障害となるケースも見られている。

また、更に事態を難しくしているのは、国内の政情不安である。感染がひろがるエリアは紛争の最前線でもあり、現地の医療施設が焼き討ちにあったり、医療従事者が武装集団に襲われ命を落とすといった悲劇も起こっている。

コンゴが位置する西アフリカにおいて、史上最悪のエボラ出血熱感染は2014年のケースであり、当時1万1000人以上が亡くなったと云われている。過去の最悪記録を塗り替えないよう、一刻も早く拡大を未然に防ぐための、または、被害を最小限に食い止めるための解決策が求められている。

[スリランカ] 食生活の欧米化と栄養知識不足による生活習慣病の増大

「2019年のスリランカ国民にとっての最大の健康懸念はNCD(非感染症疾患)である」・・・当該国の英文報道メディアThe Morningはそう伝えた。

スリランカでは今、生活習慣病に代表される非感染性疾患(NCD, Non Communicable Diseases)の広がりが深刻な社会問題となっている。WHOの2018年の発表によると、スリランカにおける死亡原因のうち75%が心臓病などの循環器疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などのいわゆるNCDであるという。

NCDは食生活習慣を整えることなどで、ある程度予防が可能ではあるが、スリランカでは、幼少期の食生活において、良質なたんぱく質・カリウムなどのミネラルを含む野菜の摂取不足の傾向があり、また、大人も健康管理や食に関する知識にうとく、子供に栄養バランスの取れた食事を提供することの重要性が認識されていない、その領域に関する国民教育が行き届いていない等のことが、社会にとっての課題として指摘されている。

健康的な生活を送るための基本知識である食事や栄養バランスに関する知識の啓蒙や、国民の病気予防に関する知識を高めるための施策が求められている。