[アフリカ] 紛争後の情勢不安による貧困と失業の悪循環

アフリカ・サヘル地域において、失業や貧困に不満を募らせる住民が、過激派組織に加担し、事態を深刻化させてしまう悪循環が起こっている。また、人々の失業問題は非常に深刻だ。情勢不安定はここ数年に起こった数々の衝突や紛争によるものだ。例えば、2012年マリの砂漠地帯がアルカイダ系武装組織に占拠され、翌年フランス主導の対過激派軍事作戦が始まった。その結果、武装組織は掃討されたものの、同地域は治安はいまも不安定なままだ。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、こうした衝突や紛争の影響を受けて、サヘル地域に住む420万人が住居を失い、さらに失業状態の住民も数百万人にのぼるという。

しかし同地域の若年層の多さは大きな希望を秘めているともいわれる。同地域の25歳未満人口は全体の64%以上を占めており、この数字から世界で最も若い地域の一つとされている。また、人口は毎年3%の割合で増加しており、30年後には人口が2倍以上(3億4000万人)に達するとも予測されている。

IMFによれば、一人当たりGDPは労働年齢人口が1%増えるごとに0.5%増加するとされ、このことからも、同地域の若年層のエンパワーメントが大きな可能性を秘めていることがうかがえる。

UNDPアフリカ局長、アフナ・エザコンワ氏(Ms. Ahunna Eziakonwa)は2019年7月に行われた「TEF-UNDP Sahel Youth Entrepreneurship Programme」の調印式の中で「サヘル地域は多くの機会が眠る地であり、この地域の若い力に投資をすることこそが、平和で安定した経済の基礎造りとなる・(中略)・彼らが夢を完全に実現する機会を作る必要がある」と強調している。

貧困と憎しみの負の連鎖を止め、若者をエンパワメントすることによって経済の好循環を生み出し、安定した社会基盤の構築を目指す。それに資するためのビジネスの構築が求められている。

[アフリカ] サヘル及びサハラ以南地域で加速する気温上昇と頻発する干ばつ

サヘル地域とは、サハラ砂漠の南縁5000kmに広がる地域を指し、その範囲はチャド、カメルーン、ニジェール、ナイジェリア、ブルキナファソ、ガンビア、ギニア、マリ、モーリタニア、セネガルの10ヵ国にまたがる広大な領域である。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、サヘル地域における気温上昇は、世界の平均の約1.5倍のスピードで進んでいるという。また干ばつは、かつて10年に1度だったものが、今は2年に1度という高い頻度で起こるようになっている。

特に、効率的な水管理や緑地化などの対策が求められている。また、そうした事業を推進するためのエネルギーとして電力が重要であるが、当該地域の電力へのアクセスは、わずか31%程度となっている。クリーンで安定的に供給される電力は最低限必要とされる設備だ。

世界銀行は、サヘル地域を含むサハラ以南アフリカの地域について、気候変動の影響で2050年までに、8500万人の人々が移住を余儀なくされると発表した。

気候変動に伴う干ばつやそれに派生して起こる深刻な社会課題に対する的確なソリューションが今求められている。

[インドネシア] 都市の地盤沈下進行と更に悪化する洪水被害

インドネシア首都ジャカルタとその周辺で2019年大晦日に発生した大洪水。1月8日のTIME紙報道によれば、死者66人にまで達する大災害となっている。

https://time.com/5761097/jakarta-indonesia-floods/

”ASEAN人道支援センター(AHA)発表によると「ジャカルタと西ジャワとバンテンの3州では地滑りと鉄砲水により、36,000人以上が避難。2013年、29人の犠牲者が出た当時「史上最悪」といわれた大洪水を、更に上回る規模の被害となっている。専門家は、急速に進む都市ジャカルタの地盤沈下が、気候変動による洪水被害を更に拍車をかけているという。また、洪水被害によって、これらの国々が抱える貧富の差を更に拡大させる恐れもあるという。

また地元のメディアあるTempo.Coによると、この異常な降雨により地盤が緩んだことによって発生した地滑りと鉄砲水が、バンテンのLebak地区の住民約17,200人の生活に大きな影響を与えている。警察発表の情報では、16のモスクが洪水によって損壊とされている。”

この気候変動によるとみられる水害の頻発に対して、更に被害を大きくしているのがジャカルタの深刻な地盤沈下である。TIME紙の同記事によればー

”世界銀行によると、北ジャカルタの一部の地域は年間で6〜10インチ(20-30センチ)も地盤沈下しており、2025年までには、最大海面下16フィートにまで下がる危険性があるという。”

 近年、急速に発展し、急激な人口増加となっているジャカルタ。その都市が水没する原因は主に2つの要素があるといわれている。一つは、市民による地下水の違法汲み上げの結果により引き起こされた地層内の空洞化。そして、もう一つは、地球温暖化による海面上昇である。

ジャカルタは漁港都市として海抜の低い湿地帯上につくられ、発展した街であり、地盤も弱い。その上、上下水道のインフラ整備が急激な人口増加に追い付かず、水道インフラの整備がなされていない。生活水の急激な需要増に都市インフラが追い付いていないため、住民による地下水の違法取水が横行しているのだ。そうした生活基盤の整備の遅れが、地下の空洞化を進行させている直接の原因と言われている。

多くの支援組織や援助国からの指摘を受け、インドネシア政府は、ジャカルタ市内の水道インフラの整備や、洪水対策のための巨大な防潮堤の建設を進めているが、今年1月に起こった被害は、首都ジャカルタの都市としての機能崩壊が相当なレベルで進んでいることを表している。

都市の水道インフラの不整備や、気候変動による災害の影響を最小限に食い止めるための施策が喫緊で求められている。

 

[途上国] 経済発展で顕著になる都市の廃棄物処理システム不在による課題

The World bank (世界銀行)が2019年9月に発表した情報によると、世界中、特に経済成長目覚ましい途上国において、廃棄物の発生率が上がっているという。

発表によると「 2016年時点では世界の大都市で約20億1,000万tの固体廃棄物が発生。つまり都市の人口一人当たり一日0.74kgという量のゴミが出たという計算である。急速な人口増加と都市化がすすむことで、このままいけば2050年にはゴミの年間廃棄量は34億4,000t、つまり2016年の70%増というレベルにまで達することが予測されている」とある。

また、「先進国の国民と比べて、途上国の特に都市部の貧困層が、ずさんな方法で管理、処理されている廃棄物によって、深刻な影響を受けているのである」としている。

低所得国では、廃棄物の90%以上が規制のないゴミ捨て場で処分される、または屋外で人の手によって燃やされる。こうした、人々の非公式なゴミ処理習慣が、人々の健康、安全な生活、そして環境への甚大な影響をもたらしているのだ。適切に処理されない廃棄物は、伝染病ウィルスや大腸菌などの繁殖を促し、メタンガスが発生することで環境汚染の根源ともなる。また、都市部の治安を乱すような心理的に負の影響を与えることがある。

また、世界銀行は発表の中で「廃棄物の適切なマネジメントがサステナブルな都市の構築には不可欠」と述べ、この課題に取り組むことに対するいくつかの視点を紹介している。例えば以下のような項目である。

インフラ整備:廃棄物の分別処理施設の建設、設備のリニューアル、不法投棄場の閉鎖、ごみ埋立て地の造設及び改修、輸送の仕組み強化のための投資

財政面のアドバイス:廃棄物処理の予算獲得に資する税や徴収方法の設計、コスト削減のための財政計画支援。

市民参画の仕組み作り:市民の行動変化や積極的関与が、廃棄物処理の仕組みを円滑にするカギである。市民の関与を促すための、ごみ削減、分別、リサイクル意識の啓蒙やインセンティブの仕組みづくりの支援

社会的包摂:途上国での廃棄物回収は、その15%〜20%の収集、選別、リサイクル作業をいわゆるインフォーマルな労働者層に依存している。こうした労働者等の人権保護や労働条件の向上、トレーニングの提供などを進めることにより包摂的社会構築のために取り組んでいる。

気候変動と環境整備:正しい廃棄物処理は環境の課題解決を促進する。また食品ロスの削減、有機廃棄物の再活用、バイオガス、埋立地ガスなどの有害ガスを回収し空気を清浄化する技術は、温室効果ガスの緩和を促進する。また用水路への不法廃棄を減らすことで都市のインフラを正常に機能させ、冠水や洪水などの災害から市民未を守っている。

健康と安全:廃棄物管理の仕組みを整える取り組みは、野焼きを減らし、害虫やウィルスの拡散を緩和。また治安の維持や公衆衛生にも貢献し、市民のQOLを向上させる。

今後ますます経済成長する途上国において、廃棄物処理の問題は重大かつ解決必須。そして、この難しい課題を解決することが、周辺の様々な課題を解決することにもつながる、まさしくレバレッジポイントであるといえよう。

増え続ける廃棄物を効率的かつサステナブルな方法で管理する仕組みに関するアイデアが必要とされている。

[コンゴ民主共和国] 世界最悪のはしか流行によって奪われる子ども達の命

2020 年1月のCNN報道によれば、アフリカのコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)における麻疹(はしか)の流行が近年における最悪レベルにまで拡大している。世界保健機関(WHO)も、1月9日までに同国におけるはしかによる死亡者が6000人を超えたことを明らかにしている。更にWHOの報告によれば、2019年以降、はしかの疑いのある症例は31万件も報告されており、その患者の1/4は、5歳未満の子ども達であるという。

はしかは感染力が強く、患者のせきやくしゃみなどの空気感染により広がる。また、体力の弱い子どもが感染することが多く、重症化すれば、脳炎や肺炎などの致死率の高い合併症を発症することもある。

この感染症の予防に最も有効なのはワクチン接種。しかしコンゴでは、昨年のエボラ出血熱が過去2番目に最悪なレベルで流行した際判明したように、人々の、国の医療システムへの不信感が根強い。また、一部の地域では相変わらず武装集団による抗争も勃発しており、それらが障害となり、人々の予防接種率は低いままなのだ。

国際連合児童基金(UNICEF)などの団体の発表によると、同団体は支援団体と連携して医薬品などの配布を続けているものの、こうした内情によって思うように対策が進んでいないといい、「包括的な長期計画が必要である」と強調。また、エボラ熱と比べた時、はしかの方が死者数が多いにもかかわらず、エボラ熱ほど注目が集まっていないと専門家は指摘している。

はしかの更なる拡大を抑える、または、感染後、すぐに治療を受けられるような医療システムの充実が、急務である。

[インド/アフリカ等] 衛生作業員の過酷な労働環境と認められない尊厳

2019年11月、国際労働機関(ILO)、ウォーターエイド、世界銀行、世界保健機関(WHO)が共同で発表した報告書によれば、開発途上国で数百万人いるといわれる「衛生作業員(人間の排泄物処理に従事する職人)」のほとんどが、機材も安全対策も法的な権利もないという非人間的な労働環境での労働を余儀なくされているという。調査発表をおこなった4つの団体は、非人道的な労働環境に対する注意を喚起し、その改善を強く促そうとしている。

人の排泄物処理のシステムは、トイレから始まり、排泄物が処分または再利用されるまでが一連の流れであるが、このシステムの様々な段階や過程において、衛生作業員達が働いている。彼らの仕事には、トイレ掃除、排泄物を溜めたタンクや水槽の汲み取り、下水道やマンホールの清掃、ポンプ場や処理プラントの操作などがあるが、こうした仕事に従事する彼らの多くが人の排泄物に直接触れ、機材や安全対策もない条件下で長時間作業をし、さまざまなガスやウィルス菌に暴露されるリスクと隣り合わせでこの仕事に従事している。

まず、命と健康にかかわる問題の一つに、有毒ガスがある。浄化槽や下水道に発生するアンモニア、一酸化炭素、二酸化硫黄などの有毒ガスは作業員の意識を失わせたり、時に死に至らしめる。正確な統計データはないものの、インドだけでも5日おきに約3人の衛生作業員が死ぬケースがあると推定されている。

一方、人権に関する課題も多い。こうした衛生作業員は多くの場合、階級社会がまだ残る社会においては下層とされる人々が就く職であり、社会から疎外され差別を受ける人々である。そんな彼らの仕事は、賃金相場も不確定で、法的権利や社会保障などもない。経済的な安定もなく、保障もないことが負の連鎖となり、かれらは貧困からさらに脱却できないのだ。

報告書では、衛生作業員の過酷な状況がわかる例がいくつか紹介されている。

インド、バンガロールの衛生作業員、Somappa。排泄物タンクの掃除は素手と裸足。傷のある足を感染症から守るためにビニール袋を巻き付けている。

アフリカ、ブルキナ・ファソのWendgoundiは、自分の職には何の尊厳もないと嘆く。「何か記録が残るわけでもない。何の実績や足跡も残らない。自分は何者でもなく、死んでもただ死ぬだけ。自分の子にわたしと同じ仕事はやらせたくない」

イギリスのNGO、ウォーターエイドの最高経営責任者(CEO)ティム・ウェインライト氏は、「誰かがトイレにたまった廃棄物を適切に処理しなければ、その衛生環境は悪化し、利用者の衛生リスクも高まる。つまり衛生作業員は、あらゆる社会で最も重要な役割の一つを担っているのだ。しかし彼らは健康と命を危険にさらす環境で働かざるを得ず、感謝もされないどころか、汚名と疎外感を背負わされている。これは決して容認されるべきことではない」と強調している。

WHOも11月15日のHP発表にて「2030年までに持続可能な開発目標6を達成するためには多くの衛生作業員等が、安全で、健康で、尊厳ある労働条件の下で働くべきである。社会全体の健康を守る衛生システムをきちんと維持する人々のため、安全で威厳のある労働環境を確保すべき」としている。

世界中の発展途上国の衛生作業員達の権利と福祉の向上に資するソリューションが求められている。

[インドネシア/マレーシア等] 越境により広範な地域に被害をもたらすヘイズ(煙害)

東南アジア地域、特にインドネシアが抱える環境破壊問題の一つ、ヘイズ(煙害)は、年々深刻さを増しているが、特に今年8月から発生したとみられる森林・泥炭火災は、4年前に起きた当時史上最悪といわれた大規模森林火災に匹敵するレベルだといわれている。

9月19日発表のロイター通信の記事では、今回の泥炭火災に関する懸念すべき事実情報を7つ挙げている。

1: 泥炭地を野焼きすることで地中のバイオマス成分が燃やされ、泥に含まれていた炭素が大気中に放出され煙が発生する。この有機炭素の中にPM2.5として知られる微粒子が含まれており、人体や気候変動に深刻な悪影響を与える可能性がある。

2: 泥炭は腐敗した植物の堆積したもの。この泥炭が燃えるとその泥の深さと密度のため消火が非常に困難であり、一度燃え始めると数ヶ月、長ければ数年もの間、燃え続けることがある。また泥炭は乾燥していると特に可燃性が高まる。森林開拓によって地下水を失い、干上がった状態の泥に燃え移れば、そのまま予期せぬエリアにまで火災が広がっていく。そして炎は泥炭を焼き尽くすと同時に、そこにあるこれから成長するはずの木々の根や種子までも燃やし尽くす。

3: 2015年9月に起こった、当時史上最悪とされたインドネシアのヘイズ被害。そのときの危機と比較しても、今回の方が、有機炭素による汚染がより広範囲に広がっていることが分かった。データによれば2015年のケースでは煙霧はまばらなところもあったが、今回の場合、より濃度が高い広範な煙霧が発生している。

4: インドネシア環境・林業省の調査データによると、ボルネオ島カリマンタン州の州都パランカラヤの大気汚染指数は500で「危険」レベルのまま。また、その他の地域、ジャンビ州やリアウ州などでも指数100またはそれ以上の数値となり「不健康」レベルとなっている。

5: インドネシア災害管理委員会のSNS発表によると、インドネシア政府はスマトラやボルネオ等の6つの州で非常事態宣言を発令。29,000人以上の軍、警察、関係省庁職員を動員して火災地域の大規模消火活動を進めている。

6: 隣国マレーシアとシンガポールにも悪影響を及ぼしており、二国で大気汚染指数が「不健康」レベルとされた。また、マレーシア政府は影響がみられる地域にある数千もの学校を閉鎖。この状況を打開するため非常手段として人工降雨を展開。また国民にマスクを配布。

7: インドネシア保健省の発表によると、パランカラヤでは11,758人、リアウでは15,346人、ジャンビでは15,047人もの人々に急性呼吸器感染症の症状が見られているという。

 

このインドネシアで発生した泥炭火災に関しては、WWFジャパンも「緊急報告:インドネシアで泥炭・森林火災が多発」として、問題の大きさと緊急性について発表している。その報告の中の「日本からできること」では、起こってしまった泥炭火災の消火活動に関する支援の必要性と、このような火災や煙害、森林破壊を未然に防ぐための企業の責任について、こう呼びかけている。

“海の向こうで起きている森林火災への対応には、まず消火活動への支援が急務です。しかし、この問題を解決するためには、こうした地域で生産されたパーム油や紙を輸入し、購入している日本の企業や消費者の理解と協力が欠かせません”

 

負の連鎖に歯止めをかけ、さらなる森林破壊、大気汚染を起こさないための策が、緊急で求められている。

 

[アフリカ] 多くの人々が苦しむHIV、結核への対策資金不足

今年10月に開催されたフランス・リヨンでのグローバルファンド増資会合で、国境なき医師団(MSF)が報告した内容。それは、「HIV/エイズ、結核対策のための資金が減少気味で、今だに続く現地住民の苦しみを手助けするため更なる支援が必要」との切実な声であった。

MSFの報告によれば、HIV対策に充てられた国際援助と各国政府の国内予算合計額が、2018年に過去10年間で初めて減少に転じ、低・中所得国に対しては10億米ドル(約1068億円)もの支援が縮小されている。結核対策の資金も同様、さらに減少がつづけていて、国連の調査によればその額は年間35億米ドル(約3737億円)も減っているという。しかしHIVと結核は、今だに年間200万人以上の命を奪い、決して収束などしていない。

中央アフリカ共和国では、少なくとも11万人がHIVとともに暮らしている。
ギニアは2010年から2016年の間にHIV/エイズによる死亡者数が7%、結核による死亡者数が5%増加。
ミャンマーはアジアでも特にHIV保有率が高い国の1つだが、資金不足は現在1億5000万米ドル(約160億円)にも上るとされる。
エスワティニ王国(旧国名:スワジランド王国)でもHIV/エイズ対策資金の不足は2020年に過去最大の2490万米ドル(約27億円)に達する見通しだ。

[カナダ] 北極圏の空気中に舞うマイクロプラスチック

北極圏の環境測定をする調査団によると、人手が加えられていない最後の環境とされる北極圏ですら空気中にマイクロプラスチックが舞っている可能性があるという。ドイツとスイスの調査チームが行ったこの研究は、学術誌「サイエンス・アドバンシス」で発表された。

調査チームはノルウェー領スヴァールバル諸島で、デザートスプーンとフラスコというありふれた手法で北極圏の雪を集めた。その後、ドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所で混入物を数えたところ、予想以上の数を見つけた。

混入物は非常に小さかったため、出所を特定することは難しいという。混入物の大半は植物繊維や動物の毛といった自然由来のものだったが、プラスチックやゴム、ニス、塗料などの欠片や、合成繊維とみられるものも見つかった。研究を主導したメラニー・バーグマン博士はBBCニュースの取材で、「ある程度の汚染は予想していたが、これほどのマイクロプラスチックが見つかったのはショックだった。このプラスチック片の大半が、雪と共に空中からやってきたことは明らかだ」と語った。

研究では、マイクロプラスチックが風で巻き上げられ、大気中を長距離飛んで北極圏まで運ばれたとみているが、その仕組みの全容はわかっていない。その後、空気中の欠片は降雨や降雪によって大気から「洗い流される」という。

4月にイギリスとフランスの共同チームが発表した研究によると、ピレネー山脈のフランス側でもマイクロプラスチックが雪と一緒に降っていることが明らかになっている。これまでにも中国広東省東莞市やイランのテヘラン、パリなどで、雨や雪からプラスチックが発見されている。いずれも、プラスチックがどこからやってきたかは不透明なままだ。

北極圏という最果ての地の雪にすらマイクロプラスチック片が混入している事実は、地球にとって危機的状況をあらわしている。研究チームの一人の博士は、「こんなに多くのプラスチック包装が必要なのでしょうか。塗料にポリマーを入れる必要があるのでしょうか。車のタイヤを別の素材、形にできないのか。こういった重要な問題を問う必要がある」と話している。

[インド] ”災害級”と言われる大都市の危険な大気汚染

2019年11月、BBCの報道によれば、インド首都デリーの大気汚染がさらに悪化し地元政府の首相が「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民に外出自粛を要請し、通行車両のナンバーを制限するといった対策が緊急で講じられている。大気汚染は、恒常的な問題、時節柄の問題など、さまざまな問題が要因となっている。

デリーは世界の大気汚染ランキングでも常にワーストに入る都市の一つだが、今回の措置はそれがさらに悪化している状態を表している。デリー政府は、「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民、学校、交通機関などに対して規制や警告を発令することになった。


まず10日間、ナンバーの末尾番号で自動車の通行制限。学校は数日の臨時休校とし、公共施設やビルの建設工事も中止された。市民にも「(特に空気が悪くなる)朝や夜間は屋外での運動を避けるように」と呼びかけた。また特に汚染がひどい地区に立ち入らないこと、扉や窓を閉め切って屋内で過ごすよう等と細かい指示を出して市民に警戒するように呼びかけた。


大気中のPM2.5のレベルは急上昇し、呼吸器疾患を引き起こす恐れのある「有害」レベルに達しているという。大気汚染の原因は何なのか。


インドでは、一年のこの季節に焼き畑やわら焼きが行われる。広大な農地が一度に焼かれることで夥しい量の煙が立ち上り、雲となって都市を覆う。また同じ時期に行われるヒンドゥー教の祭”ディワリ”で人々が打ち上げる花火の煙にも大量の有害物質が含まれており、状況をさらに悪化させる原因となっている。常態化している車の排ガスや、工事や工場で発生する有毒ガスの上に、さらにこれらの時節的な現象が加わり、空気汚染が非常に危険な状態に陥っている。関係者によれば今回の大気汚染は「災害レベル」だという。インドの大気汚染問題は年々危険性を増している。

多くの住民の健康と命を脅かす大気汚染問題の対応策が早急に求められている。