[インドネシア] 新型コロナウィルスによって遅延する煙害対策と地域住民の健康リスクの増加
2020年5月15日に投稿された課題
投稿者:SHIP Secretariat
所属:SHIP
分野・テーマ:
- 生態系
- 気候変動
- 災害
- 保健・医療
- 衛生
- 廃棄物・汚染
- インフラ・交通
場所:地域:アジア・太洋州諸国 国:インドネシア 市町村:
関連SDGs
課題・ニーズ
2020年4月現在、世界中の多くの国と同様、インドネシアもまた新型コロナウイルス感染による問題に直面していますが、対応の遅さや検査率の低さなど、政府は批判の対象となっています。首都ジャカルタの当局によると、新型コロナウィルス感染者は、今後2ヵ月程度で10万人以上に達すると予測しています。
しかし、環境保護団体などの主張によれば、COVID-19感染拡大の抑制を優先するあまり、インドネシアの農村部において深刻な環境課題となっている森林(泥炭)火災による煙害問題が更に悪化する懸念が叫ばれています。街のロックダウンが施行され、その監視のために多くの人手が必要となり、普段行っている、森林火災予防対策として行っている違法な土地開拓等の取り締まりができなくなる可能性が高いのです。また、同国の予算配分にも影響を与えており、地元メディアは同国環境省が2020年の予算を当初の予定の17%にあたる約1億100万ドルを削減したと報じています。
インドネシアの農業従事者等は、広大な森林地や泥炭地に火を放ついわゆる焼畑方式で開拓をし、パーム椰子やその他の作物の農業を営んでいます。この行為が、毎年膨大な煙霧を発生させて、周辺地域の大気を危険なレベルにまで汚染しています。昨年(2019年)に同国の非常に広範な地域で起こった森林火災は、2015年に起こった当時史上最悪と言われた煙害被害をはるかに凌ぐ酷さとなり、隣国マレーシアを巻き込み、外交問題にすら発展するほどの事件となりました。
世界銀行の報告によれば、昨年(2019)のケースでは推定16,000平方キロメートルの広さの土壌が火災となり、それによる同国の経済損失は52億ドル以上に上ると試算されました。また、当然国民の健康にも甚大な影響を及ぼしており、90万人以上の人々が、当時の煙害により呼吸器疾患を発症しています。そうした、煙害による呼吸器系疾病患者が増加している地域にとって、呼吸機能に致命的なダメージを与えるコロナウイルスの蔓延は、そうした人々を更なる命の危機にさらすことにもなるのです。
地球環境に甚大な影響を及ぼす煙害の問題を緩和し、また同時に、コロナウィルスの猛威から人々を守るための対策が喫緊で求められている。
課題に関する考察・その他
出典
https://www.japantimes.co.jp/news/2020/04/27/asia-pacific/coronavirus-southeast-asia-haze/#.XtRn9jr7RPY