[インド] 世界遺産タージ・マハルにも及ぶ都市の環境汚染
2018年9月29日に投稿された課題
投稿者:Ayana ADACHI
所属:UNDP
分野・テーマ:
- 衛生
- 廃棄物・汚染
- インフラ・交通
場所:地域:アジア・太洋州諸国 国:インド 市町村:アグラ
関連SDGs
課題・ニーズ
近年、インドにおける大気汚染が深刻化している。世界保健機関 (WHO)の報告書によれば、世界で最も大気汚染が深刻な14の都市はいずれもインドにある。工場のばい煙、街中の道路で渋滞する自動車の排ガス、また未舗装道路で土埃が大量に舞うことが原因で、インドの街はしばしばスモッグに覆われる。インドの大気汚染による人への健康被害も多数報告されており、現地では病院が呼吸器疾患や肺がんの患者であふれかえっている。
タージ・マハルのあるインド北部のアグラは世界第8位の大気汚染都市である。タージ・マハルは大気汚染だけでなく、隣接する川の汚染や、無秩序な建設ラッシュによる帯水層の沈下など様々な問題に直面している。イスラム建築代表の、タージ・マハルの美しい白い大理石が近年黄色や緑色に変色してしまっている。これは、大気中に含まれる有害な粒子や、隣接するヤムナ川に下水や産業廃棄物、家庭ごみなどが垂れ流され、そこに繁殖した昆虫の糞による影響である。
インドは、人々の健康だけでなく、自らの国を代表する世界遺産タージ・マハルの美しさを脅かすほどの環境問題を抱えている。
課題に関する考察・その他
インド政府は、タージ・マハルの白さを取り戻すために「泥パック」を用いて措置をとっているが、問題はより深刻なものとなっているようである。美しいタージ・マハルを取り戻すには、建物の洗浄作業ではなく、タージ・マハルを取り巻く環境を改善するための措置をとるべきである。まず、廃棄物や下水が垂れ流されるヤムナ川ではタージ・マハルを緑色に染める原因となる昆虫のさらなる繁殖の防止のためにも、大規模な水質管理のシステムが必要となる。
加えて、タージ・マハルのあるアグラを含めたインドの都市の大気汚染への措置を講じることが何より重要である。工場や自動車の排出する煙の浄化設備や、土埃が舞わないように道路の舗装を行うことや、肥大する交通量の整備や道路区画の工事など、大気汚染の対策案はいくらでもある。しかし、これらの対策を行うことができる資金を持つ自治体はごくわずかであり、国外からの支援を必要としている。
インドの最高裁は政府に対し、タージ・マハルの保護のため国内外から専門知識に基づく支援を求めるよう指示しているため、これらの問題に取り組む専門的な知識や技術を持ったアクターのニーズが高まっている。
出典
ロイターニュース:インドのタージ・マハル、大気汚染で白い大理石が黄色や緑に
関連サイト
https://jp.reuters.com/article/mahal-idJPKCN1IN0IX