管理職における女性の割合が実に過半数と、世界でも女性の社会進出が進んだ国のひとつである、ジャマイカ。高級官僚やビジネスエリートから、商店を切り盛りするおかみさんまで、町の至る所で活躍する女性の姿が見られます。しかしそれは、決して男女平等な社会を意味する訳ではありません。
南北アメリカの薬物や武器の密輸中継地であり、拳銃犯罪や性犯罪が横行する首都キングストンは、殺人事件の発生率が世界第2位(2017年、10万人あたり57)。
また産業も乏しく、20代の失業率は約3割でそのうちの6割は男性です。植民地時代に奴隷同士の婚姻が認められなかったカリブ諸国では、現在でも生まれてくる子どものうち半数以上が婚外子。女性が大黒柱となり働きながら子供を育てる「母系社会文化」 が定着しており、学業からドロップアウトした不良少年や、就業機会に恵まれず家庭にも居場所がない男性に対する社会支援やセーフティネットはなく、ギャング団で密輸や詐欺、強盗などの犯罪に手を染め生計を立てるケースが後をたちません。
また、「男性は男性らしく、女性は女性らしく」という異性愛尊重の文化があり、LGBTや性同一性障害を持つ人々への偏見や差別が根強く残っています。背景には「ラスタファリズム」という土着の信仰による考え方があると言われていますが、そんな世間の差別を逃れて、スラム街でひっそりと暮らすLGBTのコミュニティも存在します。
ジェンダー推進は、決して女性の社会進出を助けるだけが解決手段ではありません。ジャマイカの治安を改善し、貧困を削減するためにも、多様なジェンダーを受け容れ、エンパワメントできる社会になることが、重要な課題となっています。