2020.7.31 SHIPニュースレター [Vol.20] COVID-19による「教育格差」の緊急是正を!

SHIPニュースレターVol.20をお届けします。いつもならば子どもたちが夏休みを楽しむ声が聞こえる賑やかな時期ですが、今年はだいぶ様子が違います。今回【SDGs xビジネス最新情報】では、そんな子ども達の未来を守るための「教育」がテーマです。UNDPからは、COVID-19やSDGsに関連する様々な取り組みへの参加のお誘いを紹介していますので、ぜひご覧下さい。

 

■ CONTENTS ■======================================

【SDGs xビジネス最新情報】

COVID-19による「教育格差」の緊急是正を!

【From UNDP】

8/3(月)〆切!「パキスタンの水資源保全に関するワークショップ・チャレンジコンペティション」

9/22~24オンライン開催(国連総会会期中)「The SDG Action Zone」への参加申込受付中:8/3(月)〆切

「ビジネス・ガイド 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」発表 

「技術アクセス・パートナーシップ(TAP)」が発足  

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【SDGs xビジネス最新情報】

COVID-19による「教育格差」の緊急是正を!

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世界中が依然として闘いの最中にある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。国連のグテーレス事務総長は7月14日、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」において、「COVID-19危機が壊滅的な影響を及ぼしている原因は、私たちの過去と現在の失敗にあります。私たちは、SDGsをまだ真剣に考えていませんでした」と衝撃的なスピーチを行いました。

COVID-19は医療や経済活動に大きな影響を与えていますが、同じく大きな影響を受けているのが「教育」です。国連開発計画(UNDP)が今年5月に発表した『新型コロナウイルスと人間開発〜影響の評価と復興のビジョン〜』では、COVID-19によって、およそ9割の子どもたちが学校閉鎖の影響を受けるなどの打撃により、過去6年間の人間開発の努力が帳消しになってしまう可能性があると言及しています。

 

SDGsのゴール4は「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供する」ことを定めていますが、COVID-19によって様々な教育格差が生まれています。ひとつは、「世帯所得」による格差です。教育制度が整ってインターネット普及率も高いはずの先進国ですら、このようなパンデミックの教育現場への影響を想定していなかった自治体や政府のオンライン学習への対応の遅れにより、オンライン学習の環境を整えられない家庭の子どもに学習の遅れが生じています。

UNESCOは、学校閉鎖の影響を受けている子どもたちの数をモニタリングして2月16日から毎日発表していますが、7月29日時点で、主に低所得の106の国々で約10億人の子どもたちが学校閉鎖の影響を受けています。これら低所得の国々では、経済活動の封鎖で親が職を失って困窮した貧困層の家庭において、学校閉鎖で登校できない子ども達がその日暮らしの生活費を稼ぐため親と共に働くことを強いられ、学校が再開しても、子どもは学校に戻る機会を逸してしまうことが懸念されています。

また、オンラインの環境が整っていてもコンテンツが伴っていなければ、提供される「教育内容」に格差が生まれる状況も見られます。例えば、モルドバ共和国では、この数年、ITインフラ整備に注力し、オンライン学習も始まっていましたが、その運用や内容は現場任せにされていたため、COVID-19に際して、オンライン学習の環境は整っていたものの、子どもたちが受ける「教育内容」はバラバラで、格差が生まれてしまいました。

 

こうしたCOVID-19の影響によって起こっている様々な「教育格差」を解決しようとする企業の動きも急速に始まっています

13年前に起業した横浜のベンチャー企業LoiLo社が開発したクラウド型サービス「ロイロノート・スクール」。COVID-19以前、市内全校における教育ICTの整備をいち早く進めた熊本市が採用したことで注目され、COVID-19の影響でオンライン学習が各地で導入されるなか、ITが苦手な教師や生徒でも直感的に操作ができるため、国内のみならず、タイ、フィリピン、香港、台湾など9か国・地域以上で、急速に導入が進んでいます。

ファッション界では、とくに教育の「男女格差」を是正しようとする動きが起こっています。ディオールは2017年に世界の女子学生をサポートするプログラム「Woman@DIOR」を立ち上げましたが、今年UNESCOの「Global Education Coalition」に加わり、COVID-19によって特に困難に直面しているニジェール、ガーナ、タンザニア、ジャマイカ、パキスタン、フィリピン、スリランカの女子学生を追加で支援することを決めました。これらの国から選ばれた100人の女子学生はディオールによるメンターシップを受け、先に選ばれている500人に加わり10カ月間のオンライン教育プログラムを履修することができます。

また先述のモルドバ共和国では、COVID-19危機発生後、UNDPと企業が連携して2018年に立ち上げたオンライン学習のプラットフォーム「Studii.md」に大幅な改良が加えられました。教師、親、生徒からの意見を聞きながら改良されたこのサイトは、同国の教育・文化・研究省のオンライン学習推奨サイトに認定されました。

 

冒頭の「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」で発表された『持続可能な開発目標(SDGs)報告書2020』では「COVID-19による学校閉鎖で世界の約9割(15億7,000万人)の子どもが学校に通えず、また学校に通えないことで給食を食べられなくなった子どもが約3億8,000万人に上る」ことのほか、「遠隔教育を受けられずにいる児童・若者が少なくとも5億人以上」等といった調査結果が示されています。

COVID-19対応においては、緊急の医療対応や経済活動再開に重点が置かれていますが、平行して、持続可能な未来の実現を担う子どもたち教育の課題を解決し、教育格差を緊急に是正することが求められます。そこに企業がどのような役割を果たすことができるのか、SHIPでもぜひ検討していきたいと考えています。

 

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【From UNDP】

8/3(月)〆切!

「パキスタンの水資源保全に関するワークショップ・チャレンジコンペティション」

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UNDPは、日本政府支援のもと、パキスタンにおける水不足問題解消に向けたプロジェクトを進めており、現在「ワークショップ・チャレンジコンペティション」への参加企業やスタートアップを募集中です。

現在多くの国々が深刻な水不足に直面しており、世界人口の1/3にあたる人々が安全な水へのアクセスに課題があると言われています。パキスタンも例外ではなく、国の2/3の世帯が劣悪な水環境下にあり、毎年、5歳以下の子ども達5万3,000人が水質汚染が原因で命を落としています。<参考動画はこちら

こうした問題を踏まえ、UNDPは同国首都イスラマバードの水問題を解決するためのワークショップとチャレンジコンペティションの開催を決定。8/8(土)~10(月)の3日間のプログラムでは、ワークショップ形式で水問題とそれを取り巻く社会構造や解決策を議論。その後、企業の技術やアイディアをコンペティション形式で選定します。オンライン開催なので、世界各国から参加可能。ご関心のある方は下記リンクにて詳細を確認の上、ご応募下さい。(8/3(月)応募〆切)

>> コンペティションの詳細と応募はこちら(英語のみ)

 

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【From UNDP】

9/22~24オンライン開催(国連総会会期中)

「The SDG Action Zone」への参加申込受付中:8/3(月)〆切

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9月開催の国連総会に合わせ、SDGs達成に向けた取り組みや思いを、様々なアクターが講演、対談、ワークショップ、動画上映、パフォーマンス、テクノロジーやアートの展示等を通じて発信する「The SDG Action Zone」が、今年は9/22(火)~24(木)の3日間、オンライン上で設けられます。

SDGsの達成に向けてアイディアをお持ちの方なら、団体、個人を問わず、どなたでも応募できます。COVID-19を乗り越え、SDGsを達成し、持続可能な地球と人類の暮らしを築いていくための革新的な取り組みや作品等をお待ちしています。

ご関心のある方は下記リンクにて詳細をご確認の上、直接ご応募下さい(8/3(月)応募〆切、9月初旬選考結果発表)

>>  The SDG Action Zoneの詳細はこちら(英語のみ)

 

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【From UNDP】

「ビジネス・ガイド 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」発表

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ビジネス連携枠組み(Connetcting Business Initiaitve)」を共同で実施しているUNDPと国連人道問題調整事務所(OCHA)が、国連グローバル・コンパクトと連携して「ビジネス・ガイド 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を6月にまとめました。民間セクターと国連がどのように協力して、COVID-19に対応していけるかをまとめたものです。

民間セクターは、保健当局や世界保健機関(WHO)の推奨事項に則って、従業員、コミュニティや顧客を守ることが最も重要な役割ですが、さらに、支援金の寄付、物資の提供、啓発活動の連携という3つの取り組みも期待されています。

>> 「ビジネス・ガイド 新型コロナウイルス(COVID-19)」の詳細はこちら

 

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【From UNDP】

「技術アクセス・パートナーシップ(TAP)」が発足

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COVID-19の感染拡大を受け、人工呼吸器などの医療機器や個人用防護具、診断ツール等の医療資材の需要が高まる中、多くの開発途上国では、これらの機器やツールを自国で生産することも輸入することも難しくなっています。

そんな中、国連テクノロジー・バンクは、UNDP、UNCTAD、WHOと共同で、COVID-19対応のため、救命医療技術製品の開発途上国での生産拡大に向けた取り組み「技術アクセス・パートナーシップ(TAP)」を立ち上げました。この取り組みは、先進国と開発途上国のメーカー同士をつなぎ、現地生産に必要な情報、技術、資源等を共有することにより、必要な機器や資材の不足を解消することを目指しています。

日本の企業の皆さまも、是非TAPへのご参加をお待ちしております。

>> 「技術アクセス・パートナーシップ(TAP)」の詳細はこちら

>>  問合せ先:UNDP駐日代表事務所 グローバルヘルス専門官 阪上まで

       ( e-mail: akiko.sakaue@undp.org )

[ベトナム] ロックダウンで深刻な危機に晒される貧困層の生活

2020年3月時点の世界銀行の報告書によれば、東アジアと太平洋地域の国々の貧困層の約2400万人が、コロナウィルスの感染拡大による貧困レベルの悪化によって、更に深刻な人道的危機にさらされることを伝えている。

事態を悪くしているのは、コロナウィルスという未知の感染病による健康や生命維持に対する危機のほか、ロックダウンなどの国の措置によって日々の生業を失うことによる経済的損害という二つの大きなリスクが起こることだ。

同報告書では、東アジアなどの地域においてコロナウイルスによる影響を特に受けやすい業種として、ベトナム、カンボジアなどの「製造業」や、タイ、太平洋諸島の「観光業」を取り上げている。

そんな中、各国で具体的な支援活動を始める人々もいる。

ベトナムは、ロックダウンの間、約500万人が経済活動をストップせざるを得ず、生計を立てられない状態になっている。しかしそのベトナムで、貧しい人々を飢餓から救うべく斬新なサービスを普及させている人物がいる。同国でセキュリティサービス会社を営むHoang Tuan Anh 氏である。

ベトナムは、厳格な水際対策や国が一丸となっての社会行動抑制や都市封鎖の対応が奏功し、コロナウィルスによる感染被害は国際的にみても比較的少ないといわれている。しかし、その徹底した感染拡大防止措置により、経済的弱者である貧困層は、収入源は絶たれ、その生活が困窮を極めている。そこで彼が考え付いたのが無料の「お米ATM」である。

第1号を設置したのはホーチミン市内。そのATMからは、一回につき約1.5kgの米を出すことができる。最新のテクノロジーを駆使した機械ではないものの、そのシンプルさゆえに、効果を発揮しているという。

Hoang Tuan Anh 氏は当初、限られた期間のみ、このATMを稼働させることを考えていたが、このATMの社会貢献度の高さや、COVID-19の先が読めない事態を考慮し「(コロナウィルスが終息した後も)貧しい人々のための一つのサービスとして運営し続けることを望んでいる」という。現在、ハノイ、ダナン、メコンデルタを含む全国の30か所に設置された。同氏の活動に賛同した国内外の1,000人以上のスポンサーからの支援もあり、同氏は「最終的に100程度のATMを開設したい」と話している。

課題解決に、高度な技術や複雑なビジネスモデルが必要とは限らないことを語る好例と言えるのではないだろうか。

この例のように、パンデミックという特殊な社会情勢に翻弄され、困窮する人々の課題に、簡易かつ迅速に、そして効果的に働きかけられる解決法が、今、求められている。