[ガーナ] 急速な都市化に追い付かないプラスチック廃棄物の処理

ガーナでは年間約100万トンのプラスチック廃棄物が発生しているが、そのうちリサイクルされる率は、わずか2~5%にとどまっている。そしてリサイクル処理されない残りのプラスチック廃棄物は、埋立て(38%)、山中投棄(28%)、海中投棄(23%)、違法な焼却(11%)などのインフォーマルな形で処理されている。

特に首都アクラでは、急速な都市化とライフスタイルの変化の影響により、人々の生活から排出されるプラスチック廃棄物の処理について、深刻な問題を抱えている。

まず、ゴミの扱いに関するマナーや習慣が確立していない街には、ペットボトルやプラスチックのゴミが散乱する。これは、街の景観を損なうだけでなく、雨が降ればそのまま排水溝に流れ込み、溝や水路を詰まらせ、街の浸水や洪水被害を引き起こすのだ。

また、ゴミが散らかり放題の町は不衛生さを増すことで人々や動物の健康を脅かす。また、街の自然環境にも悪影響を及ぼしている。自然環境に悪い影響をもたらすだけではなく、ボウフラの大量発生によって蚊が爆発的に増え、マラリアなどの深刻な社会の健康被害にもつながる。

住民の、ゴミの適切な処理方法に関する知識の向上など、プラスチック廃棄物の収集やリサイクル率を上げるための工夫はなされているものの、もっと具体的なビジネスでの支援策や、住民行動の変化を促すための仕組みなど、具体的かつ有効な支援が求められている。

[ウガンダ] 難民居住区における若者の失業率

ウガンダにある南スーダン難民居住区では120万人の人々が暮らしているが、そのうち約65%(約80万人)に相当する人々が南スーダン出身である(UNHCR調べ)。南スーダンにおける戦闘の激化により、2016~2018年にかけてスーダンから隣国ウガンダへ多数の難民が発生したためだ。

難民居住地と言えば、簡素なテント生活などがイメージされるが、ここウガンダにある難民居住地区は、ウガンダ政府の独特の難民対応政策により、耐久性の高い施設がつくられ、長期間、難民が社会生活を営めるような恒久性のあるインフラが整えられている。そのため、長期に渡り滞在する難民が多くいるのだが、そんな中、とりわけ若者の失業率の高さが大きな課題となっている。

難民の多くは、メイズ(とうもろこし)や豆類、油などの食糧配布や衣料や日用品などの支援物資と、それらを物々交換したり、売ったりすることで得た現金を頼りに必要最低限の暮らしをしている。難民になる前は様々な職業や商売を営んでいた「その道のプロ」であるにも関わらず、これまでの知識や経験を使って働き収入を得るという、以前は「当たり前」だった生活の術が閉ざされているのだ。

また難民の8割は若い母親とその子供達であり、そもそも働き手となりえる男性の若者の比率も少ない。つまり、その少ない労働力を最大限活用するための「エンパワメント」が重要になっているのである。

UNDPも当該地域の若者の失業率改善のための具体的な取り組みを始めており、一定の成果は出ているが、それだけではまだまだ十分ではない。

若者、そして難民居住地全体を経済活性化するため、教育、トレーニング、ビジネス機会を創出するための包括的な支援などが喫緊に求められている。

[ブラジル] アマゾン熱帯林のCO2吸収力低下がもたらす更なるエコシステム崩壊

研究チームの発表によれば、過去30年間の調査結果から世界の熱帯林が吸収する二酸化炭素の量は予想以上の速いスピードで減少していることが判明したという。90年代と比較すると3分の1程度その「能力」が落ちている、というのだ。また、その「CO2吸収力」の低下は、酸素の産出量の低下を表すだけではなく、森林そのものが二酸化炭素ガスの「源」と化す可能性すら示しているという。

研究者チームの一人リーズ大学サイモン・ルイス教授は「典型的な熱帯林は2060年代までに炭素源になる可能性がある」という。「我々が気候変動問題に関して最も憂慮すべき問題の一つが、既に始まっていることが判明した。これはこれまで言われいた悲観的な見解よりも、更に数十年早いペースであることを示している」

今年11月に英国グラスゴーで開催されるCOP26(国連気候変動会議)では、21世紀の半ばまでに世界の国々が「ゼロ・エミッション」に到達することを期待されているが、企業や国の施策の多くは、森林保護、植林、造林等、いわゆる「オフセット」活動によるものが多い。


同教授は「実際は(小規模な地域に対する”植林”等のレベルではなく)全世界と全事業者が、完全な”ゼロエミッション”を目指す必要がある。どんな些細な炭素ガスすらも地球上の大気から排除するくらいのレベルの施策が必要とされる」と言う。

地球の二酸化炭素を吸収し我々に酸素を与えてくれていた地球上の緑は、現状のような気候変動の課題や無秩序な伐採という人的脅威にさらされている限り、その本来の「機能」を更に低下させ、むしろ気候変動を加速させる存在になる―これまで地球が営み、生命を育んできたエコシステムが、崩壊の危機にあるのである。

この急速に進む深刻な地球規模の課題に対し、抜本的な解決につながるためのソリューションが、喫緊に求められている。

[アフリカ] 紛争後の情勢不安による貧困と失業の悪循環

アフリカ・サヘル地域において、失業や貧困に不満を募らせる住民が、過激派組織に加担し、事態を深刻化させてしまう悪循環が起こっている。また、人々の失業問題は非常に深刻だ。情勢不安定はここ数年に起こった数々の衝突や紛争によるものだ。例えば、2012年マリの砂漠地帯がアルカイダ系武装組織に占拠され、翌年フランス主導の対過激派軍事作戦が始まった。その結果、武装組織は掃討されたものの、同地域は治安はいまも不安定なままだ。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、こうした衝突や紛争の影響を受けて、サヘル地域に住む420万人が住居を失い、さらに失業状態の住民も数百万人にのぼるという。

しかし同地域の若年層の多さは大きな希望を秘めているともいわれる。同地域の25歳未満人口は全体の64%以上を占めており、この数字から世界で最も若い地域の一つとされている。また、人口は毎年3%の割合で増加しており、30年後には人口が2倍以上(3億4000万人)に達するとも予測されている。

IMFによれば、一人当たりGDPは労働年齢人口が1%増えるごとに0.5%増加するとされ、このことからも、同地域の若年層のエンパワーメントが大きな可能性を秘めていることがうかがえる。

UNDPアフリカ局長、アフナ・エザコンワ氏(Ms. Ahunna Eziakonwa)は2019年7月に行われた「TEF-UNDP Sahel Youth Entrepreneurship Programme」の調印式の中で「サヘル地域は多くの機会が眠る地であり、この地域の若い力に投資をすることこそが、平和で安定した経済の基礎造りとなる・(中略)・彼らが夢を完全に実現する機会を作る必要がある」と強調している。

貧困と憎しみの負の連鎖を止め、若者をエンパワメントすることによって経済の好循環を生み出し、安定した社会基盤の構築を目指す。それに資するためのビジネスの構築が求められている。

2020.3.2 SHIPニュースレター [Vol.18] 「行動の10年」始動!SDGs達成に向けてアクションを起こすためのヒント

SHIPでは通常のプログラムに加えて、カスタマイズしたSDGsビジネスプログラムも個別に提供していますが、最近、高校や大学からプログラム実施の依頼を受けることが増えてきました。高校生や大学生向けであっても、単にSDGsを学ぶプログラムではなく、SDGsとビジネスがどう繋がるのかをお話しし、学生さん達にソリューションを考えてもらいます。達成期限まで10年が迫ったいま、SDGsの達成を担おうとする若者の熱意を目の当たりにすると、ベテラン社会人の我々も負けてはいられないという思いを強くします。

■ CONTENTS ■ =============================
【SDGs X ビジネス最新情報】
 「行動の10年」始動!SDGs達成に向けてアクションを起こすためのヒント
【From UNDP】
  オンラインゲーム「ミッション1.5」 地球温暖化対策を学び、政府へ提言!
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SDGs ×ビジネス最新情報】
 「行動の10年」始動!SDGs達成に向けてアクションを起こすためのヒント
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2020年はSDGsの達成目標2030年から逆算してちょうど10年となる節目の年。昨年12月、モハメッド国連副事務総長は、SDGs達成に向けて「行動の10年」
を始動させることを発表しました。発表の中で副事務総長は「行動の10年」を進めるための重要な「道筋」として、「人々の積極的な関与 “Mobilization”(動員) 」「規制緩和や法改正など国レベルでの大胆な変革 “Raising Ambition”(野心を高める)」「重要な課題に対する解決策の特定と着実な遂行 “Advance through Solutions” (解決策による前進)」の3点を挙げました。

この「行動の10年」は、1月22日の国連総会におけるグテーレス国連事務総長
の発言でも言及されました。事務総長は「21世紀の進歩を危うくし、21世紀の可能性を危険にさらそうとしている4つの脅威」として、「全世界的な地政学上の緊張状態」「存亡にかかわる気候危機」「世界的な不信の高まりと格差の
拡大」「デジタル化の負の側面」を挙げ、「行動の10年」を遂行することが「公正なグローバリゼーションを達成し、経済成長を推進し、紛争を予防しながら、これらの脅威を乗り越えるうえで中心的な役割を果たす」としています。
 
「行動の10年」の立ち上げを受け、SDGs達成に向けて世界の民間企業を束ねるWorld Business Council for Sustainable Development(WBCSD)は、民間企業がSDGsビジネスを推進するための”Principled prioritization”(原則に沿った優先順位付け)から始まる10のヒント(英文)を示しました。この中で日本企業にとって特に参考になるものとして、以下の4つが挙げられます。
 
4. Be global but think local:SDGsは全世界共通の課題ですが、各国・地域で課題の詳細は様々です。自社がビジネスを展開する国・地域の課題を理解して、戦略的にSDGsに取り組んでいる企業は「グローバル」にも最適なソリューションとイノベーションを提供できると述べられています。
 
7. Engage with stakeholders:様々なステークホルダー、時にはライバルとも連携すべきだと述べられています。同じ価値観を持つ者同士だけでコミュニケーションし続けると、思考が偏りアイデアは広がりません。同業他社とのオープンイノベーションの可能性や産学官プラットフォームの活用など、閉ざされた空間から出ることの重要性が強調されています。

8. Show your working:ここでは、自社のSDGs達成に向けた活動はオープンに
することが重要だと述べられています。自社が優先する課題を示すだけでなく、それを選んだ背景や自社の想いやこだわりを語り、課題解決のプロセスを広く知ってもらうことが重要です。それこそが顧客やステークホルダーの信頼を得ること、ブランド力を高めることにもつながります。
 
9. Repeat. Repeat. Repeat.:SDGs達成に向けた企業の取組みは、時間が経つにつれて変化する様々な外部環境・内部環境に応じて、常にその方向性を再検討し、必要に応じて修正するべきだと述べられています。自社の技術や人材、資産も時と共に変化します。一度決めた解決策をピボットし、時代の変化に合わせて柔軟に発想することで、より大きい社会的インパクトが与えられます。
 
WBCSDは2月26日付けで、SDGsビジネスを進める上で鍵となるポイントをわかりやすくまとめた“SDG Essentials for Business”というレポートも発行しましたので、併せてぜひご参照下さい。

前述のモハメッド国連副事務総長は、「『行動の10年』はSDGロードマップに命を吹き込むための機会である」と述べています。2030年は決して終着点ではなく、むしろその先の新しい世界に続く玄関口。2030年のさらに先の持続可能な社会をめざし、高い視座と柔軟な発想をもって「行動する」10年にするため、SHIPも皆さんの有益なパートナーでありたいと考えています。
 
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【From UNDP】
 オンラインゲーム「ミッション1.5」 地球温暖化対策を学び、政府へ提言!
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UNDPは、質問に答えながら地球温暖化対策を学び、推進してほしい対策を自国政府に提言できるオンラインゲーム「ミッション1.5」を立ち上げました。2015年のパリ協定で掲げられた「世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃未満に抑える」という目標から名付けられたこのゲームは、PCやスマートフォンで、子どもでも簡単にプレイすることができます。
プレイヤーは「自然」「エネルギー」「交通」「ひと」「経済」「農業と食料」の分野ごとに「化石燃料の消費を減らすには?」「自然破壊を止めるには?」などの質問に3択形式で答え、自国にとって重要だと思う政策に投票します。現在は英語、スペイン語などの国連公用語のみですが、今後日本語版のリリースも予定しています。ぜひ、プレイしてみて下さい!

オンラインゲーム「ミッション1.5」: https://mission1point5.org/