アジアで急成長を遂げている国の一つ、フィリピン。その経済成長は、フィリピン国民の食生活にも大きな変化をもたらしている。特に、いわゆる生活習慣病患者の急増は同国の大きな社会問題となっており、早急な対応策が求められている。
世界保健機関(WHO)のレポートによると、2010~2016年にかけてフィリピンの運動不足人口の割合が15.8%から39.7%と2倍以上に増加。また生活習慣病予備軍といわれる「体重過多」(BMI値25以上)の人口の割合が24.3%から27.6%に、「肥満」(BMI値30以上)の割合が5.0%から6.4%へと、年々増加の一途をたどっている。
フィリピンがこうした問題に直面している原因として、その元々の食文化や、いまだに国民の半数を占める貧困層の食に対する経済的な余裕のなさが影響していると言われる。伝統的な食生活にそもそも野菜を食べる習慣がないことや、貧困層にとって食事の満足感が「栄養バランス」ではなく「少ない食費でよりお腹が満たされること」であり、繊維質やビタミン源となる野菜の摂取は(お腹にたまらないため)優先されず、米やイモなどの穀類が多い食事に加えて、欧米から入ってきたいわゆる甘い炭酸飲料をあわせて飲むという食生活が主流となっているのだ。また、経済成長に伴うテレビやインターネットの普及により、日常生活の運動量も低下する傾向にある。
近年の調査では、フィリピンの死因上位10位のうち、虚血性心疾患や高血圧性疾患、糖尿病など生活習慣に起因するものが増加しており、現在、同国の成人の約6.2パーセントが糖尿病と診断されているが、2040年には糖尿病患者が1200万以上に膨らむという試算もある(現在の全人口は約一億人)。
今年、University of the East Ramon Magsaysay (UERM)メモリアル・メディカル・センター内に開設された「UERM Diabetes Center」のDr. Jennifer Nailesは「我々には糖尿病を予防する策が必要です。なぜなら、この病は一度かかるとと薬で押さえることは出来ても一生治らないものだからです」という。
人々に正しい食生活と栄養摂取と健康の管理方法を伝え、生活を一変させる恐ろしい生活習慣病にかからないよう、国民の健康を守るための早急な対応策が求められている。