[バングラデシュ] 自然災害を原因とする「環境難民」増加の可能性

 北海道の2倍程度の国土に1億6千人が住むバングラデシュは、世界で7番目に人口密度が高い国。また、ガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川などが下流で合流して形成されたデルタ地帯に国の大部分が位置している。このような地理的条件から、バングラデシュは、サイクロンや洪水などの自然災害の影響を受けやすく、過去の大きなサイクロンでは数百万から900万人もの被災者が出て、稲作や漁業などこの国の経済の根幹を成す産業にも大きな影響が出た。
 

 今後、自然災害の影響はさらに拡大することが懸念されており、とくに、現在の住まいから立ち退きしなければいけない「環境難民」の増加が懸念されている。その数は、今後5年間で2000万人とも言われている。

 

 真っ先に立ち退かなければいけない危険にさらされているのは首都ダッカの中心部のスラムや河川敷に住む700万人(ダッカの人口の約4割)。また、地方部でも、住民が薪用にマングローブを無計画に伐採してしまった結果、土地の侵食が進み、洪水の頻度が増しており、これらの人々も「環境難民」になる可能性は高い。

[全世界] 使用済み電気自動車のバッテリーの再利用

 世界の電気自動車(EV)市場は、2014年から2023年にかけて41%のCAGRで成長すると予測され、合わせてEVバッテリー市場は17%のCAGRで成長し、2025年には931億ドル市場に相当すると見込まれている。一方で、EVバッテリーは全体の容量が80%を割り込んだ時点(満タンまで充電して80%しか走れなくなった時点)で交換が必要とされているが、二次電池として再度使用することができる。その際に、家庭での使用、商業用の使用、あるいは地域での使用として使える。

 これら使用済みの電池は、無電力地域や電力不足の地域では貴重な蓄電システムの一部となる。例えば、再生可能エネルギーで発電し、EVバッテリーに蓄電することで発電率が低い日でも継続的な電力の使用を叶える事ができる。

[バングラデシュ] 海洋資源減少と養殖需要に伴う持続不可能な開発

 87%もの天然海洋資源が世界中で減少している。2030年には、人口増加に伴い、2億3千2百トンものシーフードが必要とされている。しかし、過剰摂取によりこのままいくと需要に対しての供給が全く追いつかない。それは海洋の生態系を破壊することにも繋がってしまう。こうしたことを背景に、2030年には、全てのシーフードのうち62%は、効率よく魚介類を生産できる養殖になるだろうと言われている。


 一方で、海面上昇と頻発する台風やハリケーン等の影響で、沿岸地域の土壌が塩害が発生している。バングラディッシュでは、100万ヘクタール以上の土地を持つ稲作農家に輸出品として需要があるエビ農家への移行を強制的に要請している。しかし、小規模農家はエビ農家へ移行するにも財源及び専門的な知識が不足しているため、環境に負荷がかかり持続可能ではない開発をしている。例えば、マングローブの木を切り倒し、そこに養殖所を作ってしまうことで、土壌への塩害が進み、マングローブの森が枯れてしまうことに繋がる。

[カンボジア] 小規模農家の生産性向上の必要性

 世界銀行によると、カンボジアの農産業は2004年から2012年にかけて年5%の成長を遂げ、農産物(主に米)の価格や農家の平均収入も上昇していたが、2013年から2014年には成長率が2%に落ち着いている。主な原因として、2004年から2012年までは農地の拡大が農産業成長の主な要因だったが、農地に転換できる土地も少なくなり、今後の成長には農産物の「量」の上昇から「質」の向上に転換する必要がある。実際、農地は2004年から2012年までは年4.7%拡大していたが、生産性は比較的低いままとの調査が出ている。


 しかし、カンボジアの農家は生産性を上げ、高品質な農作物を育てるための知識、技術、そして支援が不足している。例えば、農家は農作物を売った時に収入を得るが、収穫期以外は収入を得ることができない。しかし、農作物を育てる間も本来は肥料を使う必要があり、収入のない期間も投資が必要になる。しかし、自身の収入を完全に把握をしていない農家が多く、収入を把握していないため金融機関からお金を借りることができす、肥料を購入する資金を得られないという負の連鎖が発生している。


 肥料やより効率的なツールの重要性に関する知識、それらに投資する資金へのアクセス、そして高品質な農作物を適正な価格で売買する市場など、カンボジアの持続可能な農産業の成長には様々な対応が必要になる。

2018.1.11 企業募集!科学技術を活用したビジネスモデルの構築支援(科学技術振興機構プロジェクト)

SATREPSイメージ

                                     CopyrightⓒJST

科学技術イノベーション(STI)がSDGs達成に果たす役割の重要性は国際的に注目されており、国連の場でも専門会議やタスクフォースが設けられています。

日本政府も「SDGs実施指針」(2016年12月発表)の”8つの優先課題”でSTIをとりあげており、「国際協力を含む各種取組の実施や新たに生じる事象への迅速・柔軟な対応にあたり我が国の優れた科学技術イノベーションの活用を図る」という指針を示しています。

また、SDGsに先立って、開発途上国向けの開発援助のひとつとして、日本政府は2008年から「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム」(SATREPS)を実施し、国際社会が共同で取り組むことが求められている課題の解決と科学技術水準の向上につながる新たな知見や技術の獲得、これらを通じたイノベーションの創出を進めてきました。

  [SATREPSについて]  www.jst.go.jp/global/about.html

SHIPでは、世界中の生の課題とニーズを抽出し、それを企業の技術・ノウハウで解決することを目指していますが、そこに日本が誇る科学技術成果を活用するのは有効だと考え、SATREPSの成果の民間セクターでの活用の促進を支援してきました。

この度、SATREPSの実施団体のひとつである科学技術振興機構(JST)から、SATREPSで得られた成果を民間企業のビジネスにつなげることによってSDGs達成を目指すプロジェクトを開始することになり、参加企業の公募が始まりました(JINが公募選定支援業務を受託)。以下の詳細をご確認の上、応募をぜひご検討ください。JSTによる選考とマッチングの上、4月以降約1年かけて、企業とSATREPS研究者が共同でビジネスモデルを構築するための支援が提供される計画です。

 

   【SATREPSプロジェクト成果を活用したSDGsビジネス化支援プログラム】

公募期間:1月10日~2月7日(水)仮応募締切、~3月2日(金)本応募締切   

公募説明会:1月23日(火)13:30-(TKP市ヶ谷カンファレンスセンター6F)→開催済み

SATREPSプロジェクト成果説明ワークショップ:2 月14日(水)14:30-(TKP市ヶ谷カンファレンスセンター3F)

公募対象:本プログラムで対象とする以下8つのSATREPSプロジェクト成果のどれかを活用し、研究者と連携してビジネス化を図る意思がある日本で登記されている日本の民間企業、もしくは外国企業の日本法人

プログラムで提供される支援内容:                    

1)リーンスタートアップ集中研修:ビジネス化に向けて必要なノウハウやビジネスモデル構築手法に関する1日間の研修                   

2)ビジネスモデル作成・検証の支援:ビジネスモデル作成に向けた外部専門家による定期的なアドバイス(初期段階は数週間に一度程度、以降必要に応じて随時)2018年4月より約9ヶ月間予定                       

3)出張旅費の一部:1プロジェクトあたり年間数十万円程度

公募要領・応募書類:JSTのサイトからダウンロードして下さい。www.jst.go.jp/global/index.html

ビジネスモデル化対象SATREPSプロジェクト

 

  国

研究領域

   プロジェクト名

  担当研究者

アジア

インドネシア

生物資源

インドネシアにおける統合バイオリファイナリーシステムの開発 >>詳細

神戸大学 荻野千秋教授

タイ

低酸素社会

新バイオディーゼルの合成法の開発 >>詳細

北九州市立大学 朝見賢二教授

ベトナム

低酸素社会

ベトナムおよびインドシナ諸国における、バイオマスエネルギーの生産システム(植林・製造・利用)構築による多益性気候変動緩和策の研究 >>詳細

大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 前田泰昭客員教授

マレーシア

低酸素社会

生物多様性保全のためのパーム油産業によるグリーン経済の推進プロジェクト >>詳細

九州工業大学 白井義人教授

 

アフリカほか

アルジェリア

低酸素社会

サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発 >>詳細

東京工業大学 鯉沼秀臣名誉教授

チュニジア/モロッコ

生物資源

エビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究 >>詳細

筑波大学 生命環境系/北アフリカ研究センター 礒田博子教授

ブルキナファソ

地球環境

アフリカサヘル地域の持続可能な水・衛生システム開発 >>詳細

北海道大学大学院国際食資源学院 船水尚行特任教授(総合地球環境学研究所 教授)

中南米

ブラジル

地球環境

“フィールドミュージアム”構想によるアマゾンの生物多様性保全 >>詳細

京都大学 幸島司郎教授

 

本件お問い合わせ先:国立開発法人科学技術振興機構(JST)国際部 SATREPSグループ(担当:太田氏)global@jst.go.jp