[日本] 膨大な食品廃棄問題

日本では、食品廃棄物等が年間で2775万トンも生じており、その内本来食べられるにも関わらず廃棄されている食品ロスは621万トンもある。また、1101万トンの食品廃棄物は再生利用等されることもなく焼却・埋立等処分されている。

この日本の膨大な食品廃棄物問題の深刻さは、日本人1人当たりに換算すると毎日1人お茶碗約1杯分の食べ物を捨てている計算になること、一方で飢餓が原因で1日に4~5万人(1年間に1500万人以上)の人が死亡していること、年間の食品ロスが国連の年間食料援助総量(320万トン)のおよそ2倍になること、日本の食料自給率は38%しかないため大半を輸入に頼りつつも多くを捨てていることなどからわかるだろう。

食品廃棄物の発生経路としては、小売店などが設定した納品期限を過ぎていることを理由とした商慣習による返品や欠品をしないために保有して期限切れとなった在庫、印刷ミス、汚損・破損といった規格外品、新商品の発売に伴い店頭から撤去される旧商品、レストラン等の外食店では、客が食べ残した料理や製造・調理段階での仕込みすぎなど、家庭では皮の厚むきなどの過剰除去や、食べ残し、冷蔵庫等に入れたまま期限切れとなった食品などがある。

食品廃棄物の問題は、国内外の人々の食品へのアクセスに影響を与え、廃棄物処理に多額の税金を費やし、食料生産に投入された資源を無駄にするなどの影響を与えている。

[インドネシア] 多様な伝統的食文化の喪失と小規模農家の貧困

インドネシアは本来多様性に富んだ伝統的食文化を有しているが、近代的なライフスタイルが普及し、大量生産された格安の食材が市場に流入するにつれて、インドネシア固有の伝統食材(米・コーヒー・スパイス・ハーブ・トロピカルフルーツ等)が価格競争に負け、姿を消しつつある。たとえば、1960年代のインドネシアでは、7,000種類の米の品種が存在したが、いまではその多くが人々から忘れ去られ、多くの消費者は数種類の米の中から購入することが当たり前になってしまっている。

また伝統食材の多くは、昔ながらの伝統的な自然農法で、小規模農家によって生産されたもので、オーガニック製品としてとてもポテンシャルがあるにも関わらず、小規模農家は市場からは遮断された状況にあり(インドネシアは1,000もの島々で構成される島嶼国家であり多くの小規模農家が物理的にも隔離された状態にある) )知識に乏しく、貧困にあえいでいる。

[ミャンマー] 慢性的な渋滞による潜在的な経済損失

近年、ヤンゴン市内では朝夕の通勤時間帯だけではなく日中でもいたる所で慢性的な渋滞が起きている。その原因としては、ここ数年で自動車の数が急速に増加したこと、あらゆる通行者の交通マナーが無規律なこと、道路や信号などの交通インフラが脆弱なこと、電車がほぼ発達していない・利便性が低いことなどが挙げられる。自動車数の急速な増加については、2015年のミャンマーの自動車(乗用車とトラック)登録台数は約71万台で、2011年から2倍に増加したとされている。

このような渋滞は、ヤンゴン市民の経済的・社会的生活に大きな影響を与えている。特に深刻なのは、渋滞によってもたらされる潜在的な経済損失であろう。例えば、ヤンゴン市内で働く人々は、毎日の通勤と帰宅に本来必要になる時間よりも数倍の時間をかけなければならない。また、仕事で市内を移動するとしても、会議や営業などの本来の仕事をする以前に、その場所にたどり着くために多くの時間をかけなければならず、それは本来の仕事に費やすことができる時間を圧迫している。したがって、ヤンゴンの慢性的な渋滞は、人々の時間と体力を無駄に浪費し、ストレスをもたらし、潜在的な経済損失にもつながっているのである。

[中国] 郊外からの通勤に2〜3時間要する

北京での不動産価格や生活費の高騰により、郊外の「ベッドタウン」(大都市への通勤者が多く住む都市)への引越しを余儀なくされている人が急増している。例えば、北京から35キロ離れている河北省燕郊は、20年前は人口3万人だったが、今では人口100万人の都市まで成長し、通勤者をターゲットにした朝食市場や違法タクシーが増加している。

北京の住民の平均通勤時間は52分だが、郊外から通勤する人々は片道2〜3時間かけているケースが多くあり、交通費だけで社会人の初任給程に達する場合もある。また、通勤中は読書やオンライン・レッスンなどで時間を有効活用する人もいれば、窮屈な満員電車に立ったまま時間を過ごす人もいるため、単に通勤を叶えるのではなく、より快適・効率的な通勤を叶える必要がある。

長い通勤時間の原因の一つとして、鉄道などのインフラ設備が人口増加に追いついていない地域が多く、郊外ではバスやタクシーを使い、都心部では電車に乗り継ぐなど、様々な交通手段を使い分けて通勤している。結果、郊外では道が渋滞し、都心部でも電車は満員になり、更に通勤時間が長くなるという悪循環に至ってしまう。

[アフリカ] 女性のICTスキル不足とアクセス機会の欠如

2016年世界銀行は、女性が直面している3つの開発課題は次の3つとして発表しました。

1. 貧困

2. 女性に対する暴力

3. ICTへのアクセススキル

特にアフリカでは、男女の機会ギャップは大きく、例えばサブサハラアフリカ地域において、女性のほうが男性と比較して45%(約2億人)もインターネットのアクセス機会が少ないと言われています。もし、このまま何も手を打たなければ、2020年時点でアフリカ全体で女性の71%がICTへのアクセスがない状況になるとも予想されています。

デジタル化が急速に進む世界において、ICTスキルがあることは特別なことでなく、当たり前のことになるでしょう。最低限必要な生活水準です。女性の経済的なエンパワーメントを促進することは、幼少の頃からICTスキルを育てることから始まると思います。

現在、アフリカの学校で、ICTの環境もデジタルスキルも乏しい理由として、文化的な障壁やロールモデルの不在、訓練と就労の機会の不足も上げられます。

2017.12.13 参加者募集!SDGsビジネスプログラム in インド 「ヘルスケア×IoT」

【SDGsビジネスプログラム in インド】
テーマ 『ヘルスケア × IoT』 
~インドからリバースイノベーションの機会を探る~

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持続可能な開発目標(SDGs)は、国際社会が設定した2030年時点の世界のありたい姿です。しかし、このままのペースでは達成することは難しく、目標達成に向けたイノベーションが求められています。

東京大学発の教育プログラム「i.school」とSHIPを運営する一般社団法人Japan Innovation Networkが提供する本プログラムでは、人口13億人を超える巨大市場であり、ヘルスケア×IoTの分野で世界を席巻しているインドを舞台に、現地の課題起点でビジネスアイデアを創出します。

国をあげてヘルスケア産業のデジタル化を進める現場を見て、日本とは異なる環境に身を置くことで、固定概念を取り除いて新しい発想を喚起し、日本へのリバースイノベーションの機会も探っていただきます。

<プログラムの狙い>
■ リバースイノベーションを見据えた課題起点のビジネスアイデア創出
インドに身を置き、病院の現場観察や家庭インタビュー等を通じて収集したニーズ・課題を起点に、SDGsの達成に繋がる新しいビジネスアイデアを創出することを目的としています。また、日本市場を見据えたリバースイノベーションの機会も同時に探ります。

■ 0から1のイノベーションアイデアを創る力を醸成
東京大学発のi.schoolは、学科横断の教育プログラムとして、新しい製品・サービス、ビジネスモデル、社会システム等を生み出す力や価値創造力の向上などを目的に、デザイン思考やアナロジー発想などのイノベーション教育の実践と研究を行ってきました。その手法やノウハウを学び、イノベーティブなビジネスアイデア創出に必要なスキルセットを醸成します。

■ 現地でビジネスを興すためのネットワーク構築
本プログラムは、インドの理工学系高等教育機関の最高峰であるインド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)や、その中に設置されたヘルスケア分野のスタートアップインキュベーション施設Center for Healthcare Entrepreneurship(CfHE)と連携しており、プログラム終了後も参加者がビジネスを現地で興すためのネットワーク構築ができる環境を提供します。

<事前ワークショップ(東京)>
日時:2018年2月20日(火)10:00~18:00
場所:i.school スタジオ(文京区本郷5-27-8 赤門樋口ビル2F)
アジェンダ(予定):
・SDGs(持続可能な開発目標)を俯瞰的に捉える
・イノベーティブなアイデア創出手法を学ぶ

<インドでのフィールドワーク>
渡航期間:2018年3月4日(日)- 3月10日(土)
場所:インド工科大学ハイデラバード校 他
アジェンダ(予定):
・医療機関・ヘルスケア関連企業の視察
・現地生活者へのインタビュー
・アナロジー発想によるビジネスアイデア創出

<スケジュール概要(予定)>
※現地でのスケジュールは都合により変更になることがあります。schedulev2

参加費:30万円(税別、渡航費・宿泊費別)
※インドに駐在されている方は、東京のワークショップに遠隔会議システムを利用して参加していただくことが可能です。また、インドでのフィールドワークのみのご参加も可能です。その場合の参加費は、25万円(税別 集合場所までの交通費・宿泊費別)となります。

定員:20名

お問い合わせ・お申込み:info@ji-network.org

言語:
国内:英語・日本語 / インド:英語

申込期限:2018年2月6日(火)

PDF版のご案内はこちらよりダウンロードをお願いします。

[インド] 非生産的な農業に起因する貧困

インドでは人口の半分以上が、中小規模の農業に従事している。しかしながら、農業従事者は、収入を向上させるために、生産したものに付加価値を与える知識をほとんど持っていない状況である。

インドにおける織物繊維の最大の生産地であるグジャラート州では、悪天候と非生産的な農業手法により、主要な作物である綿花の生産が伸び悩んでおり、潜在的な経済成長率が充分見込めるにも関わらず、その機会を活かせていない。

[パキスタン] 住宅価格の高騰

パキスタンでは住宅が高騰し、パキスタン人の大半(多くが低中所得者層)がリーズナブルな住宅を購入できにくい事態に陥っている。パキスタンの人口は急速に増加していることと、多くの人々が金融サービスが利用できない状況も問題の背景にあり、国全体で約1000万のリーズナブルな住宅が足りないといわれている。

また、農村部から都市への移住も増えており、そうした人々が居住地区として開発されていない場所に劣悪な環境で暮らすことを余儀なくされている。住宅の保有は、パキスタン社会において重要な意味をもち、住宅と土地を保有しているか否かは、婚姻の際にパートナーが考慮する大きな要素の一つとなっている。

[ミャンマー] 電力不足と停電が引き起こす経営上の課題

2011年の民政移管以降、日本企業のミャンマーへの進出が活発化しているが、現地での経営上の大きな課題の一つが「電力不足・停電」である。

日系企業のミャンマーへの進出が増えている要因としては、ミャンマーが中国や東南アジア地域、南西アジア地域などの巨大市場の中間地点にあることから地政学的に重要な位置を占めていることや、5148万人もの人口が将来的な国民所得の向上により有望な消費市場になることが期待されていることなどがある。しかし、JETRO調べによると(2016年) 、在ミャンマー日系企業の内85%もの企業が「電力不足・停電」を経営上の課題として挙げている。実際、近年改善してきてはいるものの、ミャンマー全体の電化率は34%(2015年)に留まっている。一方で、電化率の地域差も大きく、ヤンゴン市内の電化率が78%で最も高く、それにカヤー46%、マンダレー40%、ネピドー39%と続く。地方の電化率は20%にも満たず、カレンやタニンタリーは10%以下しかない。このような状況の中、ミャンマー政府は2030年までに国内の100%電化率を目指す計画を掲げている。

「電力不足・停電」の問題は、人々の経済的・社会的生活に多様な影響を及ぼす。例えば、オフィスアワーに起きる停電はしばしばパソコンを使った業務のほとんどを停止させてしまい、仕事が進まなくなってしまう。確かに、法人/個人が発電機を導入することもできるが、自家発電には初期導入費用、メンテンナンス費用、燃料費などがかかる。そのため、自家発電機を購入、維持できる法人/個人は限られ、多くの人は停電時にただ電気へのアクセスを失ってしまう。また、発電機には盗難の危険性も付きまとう。