[アフリカ] 多くの人々が苦しむHIV、結核への対策資金不足

今年10月に開催されたフランス・リヨンでのグローバルファンド増資会合で、国境なき医師団(MSF)が報告した内容。それは、「HIV/エイズ、結核対策のための資金が減少気味で、今だに続く現地住民の苦しみを手助けするため更なる支援が必要」との切実な声であった。

MSFの報告によれば、HIV対策に充てられた国際援助と各国政府の国内予算合計額が、2018年に過去10年間で初めて減少に転じ、低・中所得国に対しては10億米ドル(約1068億円)もの支援が縮小されている。結核対策の資金も同様、さらに減少がつづけていて、国連の調査によればその額は年間35億米ドル(約3737億円)も減っているという。しかしHIVと結核は、今だに年間200万人以上の命を奪い、決して収束などしていない。

中央アフリカ共和国では、少なくとも11万人がHIVとともに暮らしている。
ギニアは2010年から2016年の間にHIV/エイズによる死亡者数が7%、結核による死亡者数が5%増加。
ミャンマーはアジアでも特にHIV保有率が高い国の1つだが、資金不足は現在1億5000万米ドル(約160億円)にも上るとされる。
エスワティニ王国(旧国名:スワジランド王国)でもHIV/エイズ対策資金の不足は2020年に過去最大の2490万米ドル(約27億円)に達する見通しだ。

[カナダ] 北極圏の空気中に舞うマイクロプラスチック

北極圏の環境測定をする調査団によると、人手が加えられていない最後の環境とされる北極圏ですら空気中にマイクロプラスチックが舞っている可能性があるという。ドイツとスイスの調査チームが行ったこの研究は、学術誌「サイエンス・アドバンシス」で発表された。

調査チームはノルウェー領スヴァールバル諸島で、デザートスプーンとフラスコというありふれた手法で北極圏の雪を集めた。その後、ドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所で混入物を数えたところ、予想以上の数を見つけた。

混入物は非常に小さかったため、出所を特定することは難しいという。混入物の大半は植物繊維や動物の毛といった自然由来のものだったが、プラスチックやゴム、ニス、塗料などの欠片や、合成繊維とみられるものも見つかった。研究を主導したメラニー・バーグマン博士はBBCニュースの取材で、「ある程度の汚染は予想していたが、これほどのマイクロプラスチックが見つかったのはショックだった。このプラスチック片の大半が、雪と共に空中からやってきたことは明らかだ」と語った。

研究では、マイクロプラスチックが風で巻き上げられ、大気中を長距離飛んで北極圏まで運ばれたとみているが、その仕組みの全容はわかっていない。その後、空気中の欠片は降雨や降雪によって大気から「洗い流される」という。

4月にイギリスとフランスの共同チームが発表した研究によると、ピレネー山脈のフランス側でもマイクロプラスチックが雪と一緒に降っていることが明らかになっている。これまでにも中国広東省東莞市やイランのテヘラン、パリなどで、雨や雪からプラスチックが発見されている。いずれも、プラスチックがどこからやってきたかは不透明なままだ。

北極圏という最果ての地の雪にすらマイクロプラスチック片が混入している事実は、地球にとって危機的状況をあらわしている。研究チームの一人の博士は、「こんなに多くのプラスチック包装が必要なのでしょうか。塗料にポリマーを入れる必要があるのでしょうか。車のタイヤを別の素材、形にできないのか。こういった重要な問題を問う必要がある」と話している。

[インド] ”災害級”と言われる大都市の危険な大気汚染

2019年11月、BBCの報道によれば、インド首都デリーの大気汚染がさらに悪化し地元政府の首相が「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民に外出自粛を要請し、通行車両のナンバーを制限するといった対策が緊急で講じられている。大気汚染は、恒常的な問題、時節柄の問題など、さまざまな問題が要因となっている。

デリーは世界の大気汚染ランキングでも常にワーストに入る都市の一つだが、今回の措置はそれがさらに悪化している状態を表している。デリー政府は、「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民、学校、交通機関などに対して規制や警告を発令することになった。


まず10日間、ナンバーの末尾番号で自動車の通行制限。学校は数日の臨時休校とし、公共施設やビルの建設工事も中止された。市民にも「(特に空気が悪くなる)朝や夜間は屋外での運動を避けるように」と呼びかけた。また特に汚染がひどい地区に立ち入らないこと、扉や窓を閉め切って屋内で過ごすよう等と細かい指示を出して市民に警戒するように呼びかけた。


大気中のPM2.5のレベルは急上昇し、呼吸器疾患を引き起こす恐れのある「有害」レベルに達しているという。大気汚染の原因は何なのか。


インドでは、一年のこの季節に焼き畑やわら焼きが行われる。広大な農地が一度に焼かれることで夥しい量の煙が立ち上り、雲となって都市を覆う。また同じ時期に行われるヒンドゥー教の祭”ディワリ”で人々が打ち上げる花火の煙にも大量の有害物質が含まれており、状況をさらに悪化させる原因となっている。常態化している車の排ガスや、工事や工場で発生する有毒ガスの上に、さらにこれらの時節的な現象が加わり、空気汚染が非常に危険な状態に陥っている。関係者によれば今回の大気汚染は「災害レベル」だという。インドの大気汚染問題は年々危険性を増している。

多くの住民の健康と命を脅かす大気汚染問題の対応策が早急に求められている。

[フィリピン] 都市の発展と人々の経済活動を阻む深刻な交通渋滞

2019年9月発表のアジア開発銀行(ADB)による報告書では、アジア諸国における人口500万人以上の278都市のうち、フィリピンのマニラが最も交通渋滞の深刻な都市に選ばれた。

都市への急激な人口流入に伴い、年々増加する通勤・通学者の数。これに対し、彼らの移動を支えられるような効率的で経済的な公共交通機関の整備が追い付いていないためである。

例えば同都市の幹線道路であるEDSA通りには47のバスターミナル、17の商業施設、そして多くの企業オフィスや教育機関が集まっており、1日当たり40万以上の車両がその道路に集中することから、毎日のように朝から晩まで深刻な交通渋滞が発生している。

BBCも、この交通渋滞に対するフィリピン政府の対応の悪さを示す記事を掲載。“フィリピン大統領の広報官は「早くその場所に着きたいのなら早く出発すればよい」という無神経な発言をし「現実を全く理解していない」と国民から非難を受けている。都市部の住民の一人はBBCの取材に対し「子供達も、片道3時間という長時間の通学を強いられている」と状況の深刻さを訴えている。さらに追い打ちをかける如く、最近になって主要な鉄道の3路線が故障する事態となり、道路渋滞を更に悪化させるトラブルにも見舞われた”などと報道している。

交通インフラ整備の遅れは、大人のみならず都市部に通学する子供達にも精神的、身体的な苦痛を強いており、ひいては国や社会の健全な発展を脅かしている。

ちなみに今回のADBの調査は、人口500万人以上のアジアの278都市を対象にGoogle Mapを用いて交通所要時間を算出しているが、マニラに続き2位以下の都市は、以下の通りとなっている。

2位クアラルンプール(マレーシア)/3位ヤンゴン(ミャンマー)/4位ダッカ(バングラデシュ)/5位バンガロール(インド)/6位ハノイ(ベトナム)/7位コルカタ(インド)/8位デリー(インド)/9位プネ(インド)/10位ホーチミン(ベトナム)

人々に時間、経済、体力的な負担を強いる過酷な都市の道路渋滞を解消するため、ひいては都市の健全な発展のためにも、道路事情の改善と質の高い交通インフラの整備につながるための解決策が早急に必要とされている。

[南太平洋] 美しい島々が犠牲となる全世界のプラスティック廃棄の問題

南太平洋にある絶海の孤島。そこに世界中から排出されたプラスチックごみが漂着し、美しい浜辺を「ゴミ溜め」のように覆いつくしている。科学者等は、世界中で使い捨てプラスチック製品を使う習慣が続く限り、美しい島々を救う手立てはないと訴える。

南太平洋に浮かぶヘンダーソン島。英国領の環礁でニュージーランドの岸辺から5500㎞も離れた位置にある絶海の孤島。しかしそのような島が海洋プラスチックごみ汚染の最もひどい場所の一つとなっている。この島だけでなく、今、世界各国が出す海洋プラスチック汚染の大部分が、こうした南太平洋の島々に世界的にも最悪の被害を引き起こしていると言われる。

今年6月、調査のためこの島を訪れた海洋科学者Jennifer Lavers氏によれば、「ボトルや容器、釣道具の一部」などがドイツ、カナダ、米国、チリ、アルゼンチン、エクアドル等、世界のあらゆる国々から漂着しているという。同氏が2015年、この島に初めて調査のため訪れた際、East Beachと呼ばれる浜辺では1メートル四方当たり約700個のプラスチックごみがあることがわかった。この数字は世界でも最悪レベルの密度だとという。この島が、南太平洋環流(South Pacific Gyre)の中心に位置するのだが、その強い海流が世界中の漂流ゴミをこの島のある地域に運んでくるのだという。

最近再び調査した際、同氏は清掃活動を企画。チームに分かれて約2週間にも渡り清掃活動を展開。浜辺からプラスチックごみ約6トンが回収された。しかしそのような膨大な労力を費やしてもなお、清掃したはずのその場所にはまたすぐに新しいゴミが漂着する。それを目の当たりにし悲痛な思いであったという。

2019年8月ツバルで行われたPacific Islands Forum (太平洋諸島フォーラム )では、そのような島々を持つ太平洋諸国のリーダーたちが、改めて世界に向けてプラスティックゴミ問題の危機的状況について、警告を発した。WWF(世界自然保護基金)の関係者は「こうした太平洋の島々は世界から見れば地域としては小さいかもしれません。しかしリーダーがこの場で世界に向けて送ったメッセージは明白です。プラスチック汚染は世界の全ての国々にとって、重大な問題なのです。」「世界規模の問題であるからこそ、世界規模での解決策が求められている。そして具体的で実践的な対策を世界レベルでいますぐ行動に移す必要があるのです」とコメントしている。

今や「待ったなし」の状況であるプラスティック廃棄物による環境汚染問題。課題を解決するための具体的なソリューションが、緊急で求められている。

[アフガニスタン] 異常気象による水害による農業壊滅、限界に達した食糧状況

反政府勢力や、過激派組織の勢力が衰えずいまだに戦火が絶えないアフガニスタン。そこでは政情不安による不安定な生活に加え、異常気象による干ばつ、数十年に一度の大洪水などが発生し、主要産業である農業に深刻な打撃を与えている。人々は国内避難民と化し、安定した生活が営めず、また、生活のために武装組織に加わるなど、負の連鎖が続いている。

人口約3600万人のアフガニスタンは、その約8割が農業を営むといわれている。しかしながら、この数年にわたる干ばつにより農作物の不作が続いており、また、更に追い打ちをかけるかの如く、数十年に一度といわれるような大規模な洪水が毎年のように発生。その度に農地が流され作物が取れず、経済的な大ダメージを与えている。また、洪水により井戸や水源が汚染され、感染症などによって、人々の健康が脅かされる状況となっている。

FAO(国連食糧農業機関)のアフガニスタン事務所代表Rajendra Aryal氏は「人々は既に貧困に陥っている。もし今年の収穫が不作となった場合、本当に最悪の事態になることが予想される」と云う。また国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、830万人が「危機的状況」、330万人が餓死寸前の「緊急段階」だという。

不安定な政情に加え、気候変動の影響により歴史的にも稀にみるレベルでの飢餓状態にあるアフガニスタン。この国の人々の命を救うための有効な策が、今、緊急で求められている。

[ソロモン諸島] 重油流出により懸念される世界遺産サンゴ礁と周辺の生態系への影響

2019年2月、南太平洋のソロモン諸島で貨物船が座礁し、重油が大量に流出したことで、世界遺産に登録されたサンゴ礁や周辺環境を脅かす事態となっている。

CNNの報道によれば、2月5日にカンガバ湾で座礁した貨物船「ソロモン・トレーダー」が座礁した際、燃料用の重油が700トン以上あり、その時以来、同船からは重油が流出し続けているという。同メディア系列のラジオNZによれば、これまでに流出した量は100トンあまりにのぼるという。

オーストラリア政府は、船内に残る約600トンの重油も流出し、海洋汚染が一層深刻化するリスクは大きいとの見方を示した。

座礁事故の現場にほど近いレンネル島は、その南部が1998年にユネスコの世界遺産に登録されており、世界で最大の隆起サンゴ礁の島。ユネスコの報告によると、流出は世界遺産のすぐ外側で発生しており、世界遺産に影響が及ぶ可能性があるほか、地元住民の生活も影響を受ける恐れがあるとのこと。

また、前述のラジオNZによると、環境への影響は既に出始めている。ソロモン諸島の災害管理当局は同局の取材に対し、死んだ魚やカニが海岸に漂着し、住民に影響が及んでいるほか、ニワトリや鳥類にも影響が出ていると語った。

美しいサンゴ礁のみならず、地域の環境や住民の健康を脅かす重油流出被害を、これ以上拡大しないための方策が求められている。

[インド] 気候変動により、更に深刻さを増す水不足問題

2019年7月現在、インド全土の4割以上が干ばつ状態となり、水不足問題はもはや国民の命の危険にまで及ぶレベルとなっている。

インド南部タミル・ナードゥ州の州都チェンナイでは、年間降水量が約半分に落ち込み、水道水としての貯水量がほぼ完全に枯渇した状況だ。同国の他の都市も同様に、自治体が持つ水源だけでは住民が生活を維持するためのニーズを満たすことができない状況となっている。

元々南アジア地域は、年間の数か月に降るモンスーンに必要な水の70%を依存している。モンスーンがその季節に恵みの雨を降らすことで、川は水をたたえ、地下には地下水が満ち、ヒマラヤ山脈は雪を頂き、その雪どけ水が人々の命の水である。しかし、逆に言えば、このモンスーンが少しでも気まぐれを興そうものなら、たちまち水不足に陥る脆弱さをもった地域なのである。

今年、インド南部の都市チェンナイでの降水量は例年より55%少ない。昨年12月のモンスーンが最後となり、その後約200日もの間、全く雨が降らない状態が続いているのだ。冬から春に季節が変わり、気温が108℉(42℃)まで上昇すると、市内の4つの貯水池では完全に干上がった地面が露わになった状態だ。2019年7月現在、市内の一部では約5か月もの間、水道がストップしており、住民等が時には夜中にまで配給の水を得るためのタンカーを引いて移動するのが日常化してしまっている。

モディ首相は、2024年までにすべてのインド国民に水道水を供給することを公約しているが、それは施設や仕組みづくりのことであり、肝心なのは、供給する「水そのもの」をどうやって手に入れるかである。

近年の気候変動により、これまで当然の如く人間が享受していた「自然の恵み」が得られなくなった今、それ以外の斬新でイノベーティブな方法でこの水不足問題を解決することが求められている。

[フィリピン] 経済成長と格差拡大により更に増える生活習慣病患者

アジアで急成長を遂げている国の一つ、フィリピン。その経済成長は、フィリピン国民の食生活にも大きな変化をもたらしている。特に、いわゆる生活習慣病患者の急増は同国の大きな社会問題となっており、早急な対応策が求められている。

世界保健機関(WHO)のレポートによると、2010~2016年にかけてフィリピンの運動不足人口の割合が15.8%から39.7%と2倍以上に増加。また生活習慣病予備軍といわれる「体重過多」(BMI値25以上)の人口の割合が24.3%から27.6%に、「肥満」(BMI値30以上)の割合が5.0%から6.4%へと、年々増加の一途をたどっている。

フィリピンがこうした問題に直面している原因として、その元々の食文化や、いまだに国民の半数を占める貧困層の食に対する経済的な余裕のなさが影響していると言われる。伝統的な食生活にそもそも野菜を食べる習慣がないことや、貧困層にとって食事の満足感が「栄養バランス」ではなく「少ない食費でよりお腹が満たされること」であり、繊維質やビタミン源となる野菜の摂取は(お腹にたまらないため)優先されず、米やイモなどの穀類が多い食事に加えて、欧米から入ってきたいわゆる甘い炭酸飲料をあわせて飲むという食生活が主流となっているのだ。また、経済成長に伴うテレビやインターネットの普及により、日常生活の運動量も低下する傾向にある。

近年の調査では、フィリピンの死因上位10位のうち、虚血性心疾患や高血圧性疾患、糖尿病など生活習慣に起因するものが増加しており、現在、同国の成人の約6.2パーセントが糖尿病と診断されているが、2040年には糖尿病患者が1200万以上に膨らむという試算もある(現在の全人口は約一億人)。

今年、University of the East Ramon Magsaysay (UERM)メモリアル・メディカル・センター内に開設された「UERM Diabetes Center」のDr. Jennifer Nailesは「我々には糖尿病を予防する策が必要です。なぜなら、この病は一度かかるとと薬で押さえることは出来ても一生治らないものだからです」という。

人々に正しい食生活と栄養摂取と健康の管理方法を伝え、生活を一変させる恐ろしい生活習慣病にかからないよう、国民の健康を守るための早急な対応策が求められている。

 

 

 

 

 

 

[ザンビア] 閉鎖鉱山の鉱滓(こうさい)による住民や子供への深刻な健康被害

アフリカ南部の国ザンビアの首都ルサカから150キロ程北にあるカブウェ市では、数十年前に閉鎖された鉛鉱山の有毒な「遺産」が、今もなお周辺地域の住民に健康被害をもたらしており、特に子供たちの知的障害や発達の遅れなどに対する懸念が高まっている。

1900年初期に操業開始し1994年に閉鎖されたカブウェの鉱山は、かつては世界最大の鉛鉱山と称された。1970年代から当時のザンビア政府によって国営化され運営されてきたものだ。

国際的な人権保護NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、かつて「カッパーベルト」と呼ばれた同地域について、その周辺地域は依然として深刻な汚染状態にあり、自宅、学校、遊び場など子供たちの居場所の周辺の土壌も高いレベルで汚染されていることで、その土に触れたり汚染土の粉塵を吸い込むことによる子供たちへの健康被害について、懸念を表明している。

現地調査の結果によると、血中鉛濃度が高い子供ほど、学習能力や発達段階を示すテストの成績が悪い傾向も示されており、鉛中毒による脳の発達への影響は、最悪の場合は脳障害にまで至るケースもあるといわれる。

既に顕在化している環境破壊や健康被害を解決し、将来更に深刻になる可能性がある周辺住民や子供たちの健康被害を防ぐための、早急な対策が求められている。