[中国] 郊外からの通勤に2〜3時間要する

北京での不動産価格や生活費の高騰により、郊外の「ベッドタウン」(大都市への通勤者が多く住む都市)への引越しを余儀なくされている人が急増している。例えば、北京から35キロ離れている河北省燕郊は、20年前は人口3万人だったが、今では人口100万人の都市まで成長し、通勤者をターゲットにした朝食市場や違法タクシーが増加している。

北京の住民の平均通勤時間は52分だが、郊外から通勤する人々は片道2〜3時間かけているケースが多くあり、交通費だけで社会人の初任給程に達する場合もある。また、通勤中は読書やオンライン・レッスンなどで時間を有効活用する人もいれば、窮屈な満員電車に立ったまま時間を過ごす人もいるため、単に通勤を叶えるのではなく、より快適・効率的な通勤を叶える必要がある。

長い通勤時間の原因の一つとして、鉄道などのインフラ設備が人口増加に追いついていない地域が多く、郊外ではバスやタクシーを使い、都心部では電車に乗り継ぐなど、様々な交通手段を使い分けて通勤している。結果、郊外では道が渋滞し、都心部でも電車は満員になり、更に通勤時間が長くなるという悪循環に至ってしまう。

[アフリカ] 女性のICTスキル不足とアクセス機会の欠如

2016年世界銀行は、女性が直面している3つの開発課題は次の3つとして発表しました。

1. 貧困

2. 女性に対する暴力

3. ICTへのアクセススキル

特にアフリカでは、男女の機会ギャップは大きく、例えばサブサハラアフリカ地域において、女性のほうが男性と比較して45%(約2億人)もインターネットのアクセス機会が少ないと言われています。もし、このまま何も手を打たなければ、2020年時点でアフリカ全体で女性の71%がICTへのアクセスがない状況になるとも予想されています。

デジタル化が急速に進む世界において、ICTスキルがあることは特別なことでなく、当たり前のことになるでしょう。最低限必要な生活水準です。女性の経済的なエンパワーメントを促進することは、幼少の頃からICTスキルを育てることから始まると思います。

現在、アフリカの学校で、ICTの環境もデジタルスキルも乏しい理由として、文化的な障壁やロールモデルの不在、訓練と就労の機会の不足も上げられます。

[ナイジェリア] ワクチン不足による乳幼児死亡率の増加

ナイジェリアでは、ワクチンがあれば助かる病気で、毎年約1610人の5歳以下の子供が亡くなっており、その数は世界でも非常に高い水準です (UNICEF 2017)。一方で、残念なことに、全体で29%(年間で2億7,500万USドルの価値にあたる)のワクチンが廃棄されており、そのうちの18%が適切な温度で保管できないことが原因での廃棄と言われています (WHO 2014)。ワクチンの適切な保管温度は、2度から8度(セ氏温度) で、その温度を保つことができれば4年間は使用することが可能です。2度から8度以外の温度で長時間放置すると、ワクチンは1週間以内に損傷してしまい、使用できなくなる可能性があります。ワクチンの損傷は、ワクチンの純供給を下げることになり、さらに期限切れのワクチンが供給に含まれてしまう可能性を高めています。ひいては、ナイジェリアの人々の健康被害を引き起こす事態へと繋がっているのです。

[日本] 老朽化が進んだ集合住宅に住む高齢者の住み替え問題

マンションやアパート、公団といった集合住宅の老朽化に伴い、住人の退去が必要になるが、高齢者はそう簡単に住み替えができなくなっている。

第一の理由は、高齢者を受け入れたくないという大家側の心理がある。高齢者で年金暮らしの場合、保証人がいないこともしばしば。諸事情で子供に頼めなかったり、頼れる身内がそもそもいないという、孤独な状態であったりするのだ。そうすると、認知症や病気になった際の対応についてまで大家が心配することになり、負担に感じてしまうという。また、万が一孤独死ということが起きた場合、部屋の現状復帰にお金がかかり、かつ、その評判から新しい借手を見つけることが困難になる。加えて、高齢者側が次の住宅を探すときには経済的なハードルも高いという。築30~40年の集合住宅の家賃は、月数万円と年金暮らしの高齢者でも生活費が捻出できる金額だが、その水準の物件を今住んでいるエリアで探すのは非常に難しい。

このように、安心・安全なまちをつくるためには、住宅環境の整備が必要だが、借手の高齢者の事情や貸手の大家の都合に折り合いがつかないため、一筋縄にはいかないのが現状である。ちなみに、65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに顕著であり、高齢者人口に占めるその割合は男性11.1%、女性20.3%となっている(2010)。よって、この問題は今後増えていくことが予想され、早急な対策の検討が必要とされている。

[バングラデシュ] 子供の栄養失調による発育不全

バングラデシュでは、全世帯の40%が貧困線以下の生活をしている。また、5歳未満の子供のうち、41%以上が慢性的な栄養失調による発育不全であり、36%が標準体重未満となっている。ビタミンやミネラルの不足は著しく、適切な身体および認知発達を損なってしまう。

また、過去に栄養失調だった子供は低身長や免疫力の低下、知的障害を抱える可能性も高い。現在、栄養失調の子供の命を救う方法はわかっているが、遅れてしまった成長を取り戻す方法は未だ明確ではない。 2014年6月4日付の「Nature」誌に発表された研究論文によれば、栄養失調の乳幼児の消化管では微生物の生態系が確立されていないという。現在の治療法では、この生態系を成熟させることはできない。例えば、栄養失調や下痢で入院している乳幼児64人に1~2週間にわたって抗生物質と栄養補助食品を摂取させ、その後家族に栄養補給の方法が指導された。しかし、もともと崩れていた微生物のバランスが最初に少し改善しただけで、その後はほかの子供に大きく水をあけられている。

栄養失調だけでなく、その後も子供が正常な成長を遂げられるようにする解決策が必要となる。

[日本] 生活用水の使用量が世界平均の2倍

東京都水道局が2012年に行った調査によると、日本人が1日に使う生活用水の使用量は平均290リットルであり、世界平均の約2倍の量を使用している。生活用水のうち、40%は風呂、22%はトイレ、17%は炊事、15%は洗濯に使われている。

日本の年間降水量は世界平均の2倍の1,718mmだが、国の面積が比較的小さい上に人口も多いため、一人あたりで換算すると世界平均の4分の1になってしまう。また、1965年から2000年までの間に生活用水の使用量の合計が約3倍に増えており、1998年をピークに緩やかに減少しているが、依然世界平均よりも使用量が多くなっている。つまり、一人あたりの生活用水の使用量は世界平均より多いが、降水量は世界平均より少なく、今後はより持続可能な水の使用が求められる。

[エチオピア] 身体障がい者の深刻な健康問題

身体障がい者の中には、足が全く機能せず、手を使って歩行し、そのことが原因でさらに状況が悪化し、感染症や他の重大な病気に掛かってしまう人が少なくない。2015年のWHOのデータによると、世界では、約7000万人の人が何等かの障がいを持っており、そのうちの殆どが途上国の農村部に住んでいる。農村部には、適切な保健医療サービスがなく、あっても非常にアクセスしにくい状況だ (ILO, 2013)。中でもエチオピアはアフリカの中でも最も障がい者が多いと言われており、その数は人口の17.6%にあたる150万人にも上る(CBM, 2015)。足に障がいを持つ人はそのうちの23%だ(DCDD 2017)。多くが貧困に直面しており、車いすや松葉杖といった移動に最低限必要な手段にも手が届かない。農村部のインフラも整っていないため、身体障がい者には厳しい生活環境となっている。この問題はエチオピアのみならず、多くの地域にも当てはまることだ。エチオピアでの解決策を切っ掛けに世界中の障がい者が暮らしやすい世の中を目指すべきだ。

[リベリア] 雇用を生み出す産業の不足

1989~2003年までの長い内戦から復興中であったリベリアを2014年にエボラ出血熱の大流行が襲い、国の復興がさらに遅れることになった。リベリアには雇用機会が少なく、とくに若者の失業率は深刻。産業の発展は海外からの投資に頼らざるをえないが、外資系企業の進出に関しては、土地の所有権や鉱物の採掘権に関する地元のコミュニティとの紛争も後を絶たない。

[全世界] プラスチック製造時に排出される二酸化炭素

地球温暖化には様々な原因があるが、温室効果ガスの中でも二酸化炭素が最も影響度が大きいと言われている。しかし、プラスチックなど、現代社会の生活からは切り離せない素材の製造工程で化石燃料を燃やす際に多くの二酸化炭素が放出されている。プラスチック産業は年間3700億ドルの価値があると推定されており、今後も人々の生活で使われ続けられると予想される。

バイオプラスチックなどのカーボン・ニュートラル(地上の二酸化炭素の増減に影響を与えない)な手法で地上の二酸化炭素を一定量に保つ事が目指されているが、現在の量を保つのではなく、量を今後減らしていく必要性が議論されている。

[カンボジア] 教育の質と高いドロップアウト率

カンボジアでは、1970-1993年の内戦中に多くの教育施設が破壊されて、多くの知識人が迫害され、命を落とした。内戦終了後に海外からの支援を受けて、多くの教育施設が建てられたが、教員の指導力と教育水準の低さが依然として課題。また、都市と地方で就学率・進学率に大きな差があり、教育へのアクセスおよび質に格差が生じている。初等教育におけるドロップアウト率(退学率)の高さも課題で、政府統計によると、例えば、コンポンチュナン県の小学校3年生が6年生に残る率は71%となっている(2012年時点)。国全体での小学校卒業率は96.3%(2014年、世界銀行)、成人識字率は78%(2015年、ユネスコ)。これらがカンボジアの発展の阻害要因のひとつになっている。