UNDP Accelerator Labsフィリピンによると、世界では年間800万トンのプラスチックゴミが海洋に流れ出ています。紙や牛乳パックが捨てられてから土に還るまでの期間はおよそ2週間〜5年であるのに対し、ペットボトルなどを含むプラスチックゴミの残存期間は400年以上。長期間にわたり生態系に影響するため、たとえば、海に沈んで蓄積することで海底の無酸素状態を引き起こし生物を窒息させてしまう原因になったり、水中に届くはずの光も遮り光合成を阻害することで海藻や珊瑚に深刻なダメージを与える恐れがあります。
また、これによりプランクトンや海藻の量が減ると、それらを餌にする海の生物の漁獲量にも影響を及ぼします。その問題の深刻さは、National Geographicが2048年までに食用の魚がいなくなる恐れがあるという見解も出しているほどです。
また、経済成長著しい国では、急速な都市化が進んでいます。たとえば、フィリピンでは人口の60%が沿岸自治体及び沿岸都市内に暮らし、プラスチックの年間排出量は毎年270万トン。しかしながら廃棄物の処理能力は限られ、誤った方法で管理されているプラスチックはこのうち188万トンに上ります。海洋ゴミの排出量は世界第3位 にあげられ、特に人口が集中するマニラ湾の海洋廃棄物管理は、喫緊の課題です。
日本では2020年7月より買い物袋の有料化がはじまりましたが、フィリピンでも、プラスチックごみを減らすために使用制限やごみの適切な回収を呼び掛けるなど、様々な取り組みが既になされています。
1 . プラスチック包装の禁止
UNDPフィリピンのオフィスがあるマカティ市では2013年からプラスチックチックの使用が可原則禁止されています。
例えば、カフェやファストフード店では原則として紙製のストローが使われています。飲食品の小売店でもプラスチックのスプーンは提供せず、イートイン客にのみステンレス製のスプーンの提供を行っています。
2. 廃プラスチックとコメの交換
プラスチックごみを独自にコメと交換する自治体もあります。たとえば、マニラ首都圏モンティンルパ市 バヤーナンという集落では、2キロの廃プラスチックを1キロのコメと交換しています。廃プラスチックは本来1キロで7ペソ(約15円、1ペソ=約2.1円)にしかならないところ、30~40ペソ相当のコメを支給することで、市民の環境を配慮した行動を促しているのです。
加えて、人口1億700万人のうち約2割が貧困ラインで生活するフィリピンでは、穀物の配布が貧困削減や栄養状態の改善にもつながる他、町の浄化によるデング熱などの感染症予防にも役立つことが期待されています。
プラスチックごみによる環境被害は都市化とも密接に連携し、課題解決が急がれています。日本のリサイクル技術や処理技術が、フィリピンの課題解決に一石を投じる可能性があります。