マンションやアパート、公団といった集合住宅の老朽化に伴い、住人の退去が必要になるが、高齢者はそう簡単に住み替えができなくなっている。
第一の理由は、高齢者を受け入れたくないという大家側の心理がある。高齢者で年金暮らしの場合、保証人がいないこともしばしば。諸事情で子供に頼めなかったり、頼れる身内がそもそもいないという、孤独な状態であったりするのだ。そうすると、認知症や病気になった際の対応についてまで大家が心配することになり、負担に感じてしまうという。また、万が一孤独死ということが起きた場合、部屋の現状復帰にお金がかかり、かつ、その評判から新しい借手を見つけることが困難になる。加えて、高齢者側が次の住宅を探すときには経済的なハードルも高いという。築30~40年の集合住宅の家賃は、月数万円と年金暮らしの高齢者でも生活費が捻出できる金額だが、その水準の物件を今住んでいるエリアで探すのは非常に難しい。
このように、安心・安全なまちをつくるためには、住宅環境の整備が必要だが、借手の高齢者の事情や貸手の大家の都合に折り合いがつかないため、一筋縄にはいかないのが現状である。ちなみに、65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに顕著であり、高齢者人口に占めるその割合は男性11.1%、女性20.3%となっている(2010)。よって、この問題は今後増えていくことが予想され、早急な対策の検討が必要とされている。