[インドネシア] 多様な伝統的食文化の喪失と小規模農家の貧困

インドネシアは本来多様性に富んだ伝統的食文化を有しているが、近代的なライフスタイルが普及し、大量生産された格安の食材が市場に流入するにつれて、インドネシア固有の伝統食材(米・コーヒー・スパイス・ハーブ・トロピカルフルーツ等)が価格競争に負け、姿を消しつつある。たとえば、1960年代のインドネシアでは、7,000種類の米の品種が存在したが、いまではその多くが人々から忘れ去られ、多くの消費者は数種類の米の中から購入することが当たり前になってしまっている。

また伝統食材の多くは、昔ながらの伝統的な自然農法で、小規模農家によって生産されたもので、オーガニック製品としてとてもポテンシャルがあるにも関わらず、小規模農家は市場からは遮断された状況にあり(インドネシアは1,000もの島々で構成される島嶼国家であり多くの小規模農家が物理的にも隔離された状態にある) )知識に乏しく、貧困にあえいでいる。

[ミャンマー] 慢性的な渋滞による潜在的な経済損失

近年、ヤンゴン市内では朝夕の通勤時間帯だけではなく日中でもいたる所で慢性的な渋滞が起きている。その原因としては、ここ数年で自動車の数が急速に増加したこと、あらゆる通行者の交通マナーが無規律なこと、道路や信号などの交通インフラが脆弱なこと、電車がほぼ発達していない・利便性が低いことなどが挙げられる。自動車数の急速な増加については、2015年のミャンマーの自動車(乗用車とトラック)登録台数は約71万台で、2011年から2倍に増加したとされている。

このような渋滞は、ヤンゴン市民の経済的・社会的生活に大きな影響を与えている。特に深刻なのは、渋滞によってもたらされる潜在的な経済損失であろう。例えば、ヤンゴン市内で働く人々は、毎日の通勤と帰宅に本来必要になる時間よりも数倍の時間をかけなければならない。また、仕事で市内を移動するとしても、会議や営業などの本来の仕事をする以前に、その場所にたどり着くために多くの時間をかけなければならず、それは本来の仕事に費やすことができる時間を圧迫している。したがって、ヤンゴンの慢性的な渋滞は、人々の時間と体力を無駄に浪費し、ストレスをもたらし、潜在的な経済損失にもつながっているのである。

[中国] 郊外からの通勤に2〜3時間要する

北京での不動産価格や生活費の高騰により、郊外の「ベッドタウン」(大都市への通勤者が多く住む都市)への引越しを余儀なくされている人が急増している。例えば、北京から35キロ離れている河北省燕郊は、20年前は人口3万人だったが、今では人口100万人の都市まで成長し、通勤者をターゲットにした朝食市場や違法タクシーが増加している。

北京の住民の平均通勤時間は52分だが、郊外から通勤する人々は片道2〜3時間かけているケースが多くあり、交通費だけで社会人の初任給程に達する場合もある。また、通勤中は読書やオンライン・レッスンなどで時間を有効活用する人もいれば、窮屈な満員電車に立ったまま時間を過ごす人もいるため、単に通勤を叶えるのではなく、より快適・効率的な通勤を叶える必要がある。

長い通勤時間の原因の一つとして、鉄道などのインフラ設備が人口増加に追いついていない地域が多く、郊外ではバスやタクシーを使い、都心部では電車に乗り継ぐなど、様々な交通手段を使い分けて通勤している。結果、郊外では道が渋滞し、都心部でも電車は満員になり、更に通勤時間が長くなるという悪循環に至ってしまう。

[アフリカ] 女性のICTスキル不足とアクセス機会の欠如

2016年世界銀行は、女性が直面している3つの開発課題は次の3つとして発表しました。

1. 貧困

2. 女性に対する暴力

3. ICTへのアクセススキル

特にアフリカでは、男女の機会ギャップは大きく、例えばサブサハラアフリカ地域において、女性のほうが男性と比較して45%(約2億人)もインターネットのアクセス機会が少ないと言われています。もし、このまま何も手を打たなければ、2020年時点でアフリカ全体で女性の71%がICTへのアクセスがない状況になるとも予想されています。

デジタル化が急速に進む世界において、ICTスキルがあることは特別なことでなく、当たり前のことになるでしょう。最低限必要な生活水準です。女性の経済的なエンパワーメントを促進することは、幼少の頃からICTスキルを育てることから始まると思います。

現在、アフリカの学校で、ICTの環境もデジタルスキルも乏しい理由として、文化的な障壁やロールモデルの不在、訓練と就労の機会の不足も上げられます。

[インド] 非生産的な農業に起因する貧困

インドでは人口の半分以上が、中小規模の農業に従事している。しかしながら、農業従事者は、収入を向上させるために、生産したものに付加価値を与える知識をほとんど持っていない状況である。

インドにおける織物繊維の最大の生産地であるグジャラート州では、悪天候と非生産的な農業手法により、主要な作物である綿花の生産が伸び悩んでおり、潜在的な経済成長率が充分見込めるにも関わらず、その機会を活かせていない。

[パキスタン] 住宅価格の高騰

パキスタンでは住宅が高騰し、パキスタン人の大半(多くが低中所得者層)がリーズナブルな住宅を購入できにくい事態に陥っている。パキスタンの人口は急速に増加していることと、多くの人々が金融サービスが利用できない状況も問題の背景にあり、国全体で約1000万のリーズナブルな住宅が足りないといわれている。

また、農村部から都市への移住も増えており、そうした人々が居住地区として開発されていない場所に劣悪な環境で暮らすことを余儀なくされている。住宅の保有は、パキスタン社会において重要な意味をもち、住宅と土地を保有しているか否かは、婚姻の際にパートナーが考慮する大きな要素の一つとなっている。

[ミャンマー] 電力不足と停電が引き起こす経営上の課題

2011年の民政移管以降、日本企業のミャンマーへの進出が活発化しているが、現地での経営上の大きな課題の一つが「電力不足・停電」である。

日系企業のミャンマーへの進出が増えている要因としては、ミャンマーが中国や東南アジア地域、南西アジア地域などの巨大市場の中間地点にあることから地政学的に重要な位置を占めていることや、5148万人もの人口が将来的な国民所得の向上により有望な消費市場になることが期待されていることなどがある。しかし、JETRO調べによると(2016年) 、在ミャンマー日系企業の内85%もの企業が「電力不足・停電」を経営上の課題として挙げている。実際、近年改善してきてはいるものの、ミャンマー全体の電化率は34%(2015年)に留まっている。一方で、電化率の地域差も大きく、ヤンゴン市内の電化率が78%で最も高く、それにカヤー46%、マンダレー40%、ネピドー39%と続く。地方の電化率は20%にも満たず、カレンやタニンタリーは10%以下しかない。このような状況の中、ミャンマー政府は2030年までに国内の100%電化率を目指す計画を掲げている。

「電力不足・停電」の問題は、人々の経済的・社会的生活に多様な影響を及ぼす。例えば、オフィスアワーに起きる停電はしばしばパソコンを使った業務のほとんどを停止させてしまい、仕事が進まなくなってしまう。確かに、法人/個人が発電機を導入することもできるが、自家発電には初期導入費用、メンテンナンス費用、燃料費などがかかる。そのため、自家発電機を購入、維持できる法人/個人は限られ、多くの人は停電時にただ電気へのアクセスを失ってしまう。また、発電機には盗難の危険性も付きまとう。

[ケニア] 都市スラムにおける医療・衛生問題

ナイロビのスラム地域では、大半の住民が、不衛生な生活環境に置かれており、汚染水、下水処理、栄養不良が深刻。そうした環境の中、多くの人々本来予防可能であり疾病や下痢に苦しんでいる。スラム地域は医療環境が充分ではなく、低水準の治療行為を行う認可されていない非公式なクリニックや薬局がおおく見受けられる。そのような施設では、適切な医療教育を受けているスタッフがいないことや、必要な医療機器が足りないことが問題になっている。またコミュニティレベルでの医療・衛生面での教育が不十分である。

[エルサルバトル] 農業従事者の貧困問題

エルサルバトルでは90%以上が農業従事者であるが、不十分な農業技術や品質に関する知識、市場やファイナンスについての知識不足により、生産効率の悪さや不均一な品質が問題になっている。また、金融サービスへのアクセスが乏しいことから、生産改善のための投資ができない状態にあり、貧困状態からぬけ出せないでいる。

[ナイジェリア] ワクチン不足による乳幼児死亡率の増加

ナイジェリアでは、ワクチンがあれば助かる病気で、毎年約1610人の5歳以下の子供が亡くなっており、その数は世界でも非常に高い水準です (UNICEF 2017)。一方で、残念なことに、全体で29%(年間で2億7,500万USドルの価値にあたる)のワクチンが廃棄されており、そのうちの18%が適切な温度で保管できないことが原因での廃棄と言われています (WHO 2014)。ワクチンの適切な保管温度は、2度から8度(セ氏温度) で、その温度を保つことができれば4年間は使用することが可能です。2度から8度以外の温度で長時間放置すると、ワクチンは1週間以内に損傷してしまい、使用できなくなる可能性があります。ワクチンの損傷は、ワクチンの純供給を下げることになり、さらに期限切れのワクチンが供給に含まれてしまう可能性を高めています。ひいては、ナイジェリアの人々の健康被害を引き起こす事態へと繋がっているのです。