[インド] ゴミが散乱したまち

 インドにもゴミを収集して処理するという仕組みはあるが、施設キャパが処理量に追いつかず、まちの至る所にゴミが散乱している。ゴミ箱もあるところにはあるが、一人がゴミ箱でもないのにある場所にゴミを捨て始めると、次から次へとそこにゴミが分別されることもなく捨てられ、山のようになっている土地がいくつも見受けられる。

 プラスチックなども処理施設ではないところで燃やされることもあり、ダイオキシンが発生して健康被害にも繋がってしまう。

[ウガンダ] 不十分なメンタルヘルスケア環境

 1962年の独立後も反政府組織が活発に活動したウガンダ北部で、首都のカンパラから車で5時間程度の距離にある都市、グル(Gulu)。ここにあるGulu Regional Referral Hospitalの精神科には医師が1人しかおらず、1日の平均外来患者数50~100人に対して、精神科臨床担当官、看護師、ソーシャルワーカー、カウンセラーなどの医療スタッフの数が不足している。病状が落ち着かない患者に対しては、やむを得ず薬を注射することもある。精神薬も不足しており、入院中は薬が飲めても、退院後は薬を入手できないということも多い。病室も適切ではなく、病状が重い患者を収容する保護室は、入り口が鉄格子でできており、ベッドもトイレもない。

[中国] エアコンによる電力消費量及び環境負担の削減

 全世界の電力消費量の17%はエアコンと冷蔵庫の使用によるものであり、更には米国だけでもエアコンから年間1700万トンのCO2が排出されています。エアコン等の冷却システムは技術の発展と共に効率化していますが、依然として多くの電力を使用しており、ピーク時には大きな電力需要をもたらします。さらに、エアコンは温室効果がCO2より何倍も高い代替フロンガスを放出し、その削減は地球温暖化対策には必要不可欠となります。  

 そして、今後は世界中で都市化が進むにつれ各国の中流階級がエアコンを購入することが予想されており、はじめから環境負担の少ないエアコンを導入する事が求められています。特に中国は2016年度の全世界のエアコン販売数の39.7%(約4億個)を占めており、中国の中流階級に商品として魅力的且つ環境負担の少ないエアコンを提供することが重要となります。  

 また、家庭用のエアコンに限らず、世界中のデータセンターでの冷却も同じ課題に直面しています。実際、2015年の全世界の電力消費量の2%はデータセンターの冷却によるものでした。家庭でのエアコン使用だけでなく、企業もデータセンターの冷却をよりコストと環境負担を抑えた方法で行う必要があります。

[インド] 交通マナーが整っていないことによる交通事故のリスクが高い

 WHOの調査によると、アジアにおいて交通事故の死傷者数が多いのは、中国に次いでインドであり、その数は20万人にのぼると言われている。


 インドのハイデラバードは、急速な経済成長に伴い、自動車の数も増えており、道路の整備も進んでいるが、信号や横断歩道がなかったり、バイクのノーヘルや急な追い越し、Uターン等により交通事故のリスクは高い。インドには自動車学校はあるものの、両親や友人が運転を教えてもいいことになっており、試験にさえパスすれば必ずしも自動車学校に行かなくてもいいことになっているようだ。また、警察の取り締まりも追いついておらず、法律でバイクのノーヘルや無免許運転は罰則されるものの、あまりにも違反の数が多いため、実際に事故を起こすまで警察も中々動かない。

[タンザニア] 土地を所有していても、法的な所有権を持たない

 タンザニアではほとんどの人が土地の法的な所有権を持っておらず、さらには土地のわずか30%しか地図で整理されていないため、本来所有していた土地を都市開発等に伴って失ってしまうリスクがある。土地の法的な所有権を持っていないと、土地を失ってしまうリスクがあるだけでなく、資産の証明がないため金融機関からお金を借りることもできず、農業やビジネスに必要な資金投資も行えない。

また、地図上で自身の土地の正確な広さや範囲を確認することができず、近隣トラブルに繋がるケースもある。実際、2014年にタンザニア北部の村では、近隣の住民同士で土地の所有権に関し言い争いが発生し、数名の死者が出てしまう事件があった。
 しかし、村レベルでの地図が無いため、村人が登記をする場合には土地管理局の測量士 2-3 名を直接雇用することが必要であるが、それには法的知識があり、かつ測量師派遣の人件費、食費・日当・宿泊費等が支払える人に限られる。よって、所有権確定の審査にアクセスがあるのはある程度の教育を受け、英語力、法的知識があり、諸費用を払えるほどの財力がある、限られた層になっている。

[バングラデシュ] 自然災害を原因とする「環境難民」増加の可能性

 北海道の2倍程度の国土に1億6千人が住むバングラデシュは、世界で7番目に人口密度が高い国。また、ガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川などが下流で合流して形成されたデルタ地帯に国の大部分が位置している。このような地理的条件から、バングラデシュは、サイクロンや洪水などの自然災害の影響を受けやすく、過去の大きなサイクロンでは数百万から900万人もの被災者が出て、稲作や漁業などこの国の経済の根幹を成す産業にも大きな影響が出た。
 

 今後、自然災害の影響はさらに拡大することが懸念されており、とくに、現在の住まいから立ち退きしなければいけない「環境難民」の増加が懸念されている。その数は、今後5年間で2000万人とも言われている。

 

 真っ先に立ち退かなければいけない危険にさらされているのは首都ダッカの中心部のスラムや河川敷に住む700万人(ダッカの人口の約4割)。また、地方部でも、住民が薪用にマングローブを無計画に伐採してしまった結果、土地の侵食が進み、洪水の頻度が増しており、これらの人々も「環境難民」になる可能性は高い。

[全世界] 使用済み電気自動車のバッテリーの再利用

 世界の電気自動車(EV)市場は、2014年から2023年にかけて41%のCAGRで成長すると予測され、合わせてEVバッテリー市場は17%のCAGRで成長し、2025年には931億ドル市場に相当すると見込まれている。一方で、EVバッテリーは全体の容量が80%を割り込んだ時点(満タンまで充電して80%しか走れなくなった時点)で交換が必要とされているが、二次電池として再度使用することができる。その際に、家庭での使用、商業用の使用、あるいは地域での使用として使える。

 これら使用済みの電池は、無電力地域や電力不足の地域では貴重な蓄電システムの一部となる。例えば、再生可能エネルギーで発電し、EVバッテリーに蓄電することで発電率が低い日でも継続的な電力の使用を叶える事ができる。

[バングラデシュ] 海洋資源減少と養殖需要に伴う持続不可能な開発

 87%もの天然海洋資源が世界中で減少している。2030年には、人口増加に伴い、2億3千2百トンものシーフードが必要とされている。しかし、過剰摂取によりこのままいくと需要に対しての供給が全く追いつかない。それは海洋の生態系を破壊することにも繋がってしまう。こうしたことを背景に、2030年には、全てのシーフードのうち62%は、効率よく魚介類を生産できる養殖になるだろうと言われている。


 一方で、海面上昇と頻発する台風やハリケーン等の影響で、沿岸地域の土壌が塩害が発生している。バングラディッシュでは、100万ヘクタール以上の土地を持つ稲作農家に輸出品として需要があるエビ農家への移行を強制的に要請している。しかし、小規模農家はエビ農家へ移行するにも財源及び専門的な知識が不足しているため、環境に負荷がかかり持続可能ではない開発をしている。例えば、マングローブの木を切り倒し、そこに養殖所を作ってしまうことで、土壌への塩害が進み、マングローブの森が枯れてしまうことに繋がる。

[カンボジア] 小規模農家の生産性向上の必要性

 世界銀行によると、カンボジアの農産業は2004年から2012年にかけて年5%の成長を遂げ、農産物(主に米)の価格や農家の平均収入も上昇していたが、2013年から2014年には成長率が2%に落ち着いている。主な原因として、2004年から2012年までは農地の拡大が農産業成長の主な要因だったが、農地に転換できる土地も少なくなり、今後の成長には農産物の「量」の上昇から「質」の向上に転換する必要がある。実際、農地は2004年から2012年までは年4.7%拡大していたが、生産性は比較的低いままとの調査が出ている。


 しかし、カンボジアの農家は生産性を上げ、高品質な農作物を育てるための知識、技術、そして支援が不足している。例えば、農家は農作物を売った時に収入を得るが、収穫期以外は収入を得ることができない。しかし、農作物を育てる間も本来は肥料を使う必要があり、収入のない期間も投資が必要になる。しかし、自身の収入を完全に把握をしていない農家が多く、収入を把握していないため金融機関からお金を借りることができす、肥料を購入する資金を得られないという負の連鎖が発生している。


 肥料やより効率的なツールの重要性に関する知識、それらに投資する資金へのアクセス、そして高品質な農作物を適正な価格で売買する市場など、カンボジアの持続可能な農産業の成長には様々な対応が必要になる。

[日本] 膨大な食品廃棄問題

日本では、食品廃棄物等が年間で2775万トンも生じており、その内本来食べられるにも関わらず廃棄されている食品ロスは621万トンもある。また、1101万トンの食品廃棄物は再生利用等されることもなく焼却・埋立等処分されている。

この日本の膨大な食品廃棄物問題の深刻さは、日本人1人当たりに換算すると毎日1人お茶碗約1杯分の食べ物を捨てている計算になること、一方で飢餓が原因で1日に4~5万人(1年間に1500万人以上)の人が死亡していること、年間の食品ロスが国連の年間食料援助総量(320万トン)のおよそ2倍になること、日本の食料自給率は38%しかないため大半を輸入に頼りつつも多くを捨てていることなどからわかるだろう。

食品廃棄物の発生経路としては、小売店などが設定した納品期限を過ぎていることを理由とした商慣習による返品や欠品をしないために保有して期限切れとなった在庫、印刷ミス、汚損・破損といった規格外品、新商品の発売に伴い店頭から撤去される旧商品、レストラン等の外食店では、客が食べ残した料理や製造・調理段階での仕込みすぎなど、家庭では皮の厚むきなどの過剰除去や、食べ残し、冷蔵庫等に入れたまま期限切れとなった食品などがある。

食品廃棄物の問題は、国内外の人々の食品へのアクセスに影響を与え、廃棄物処理に多額の税金を費やし、食料生産に投入された資源を無駄にするなどの影響を与えている。