[バングラデシュ] 洪水により子どもが学校に通えない

 バングラデシュはガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川という世界的な国際河川の最下流に位置し、これらの河川やその支流、分流によって形成された平坦な沖積低地からなる低平地国です。その上、バングラデシュは熱帯モンスーン気候影響下にあり、雨期である6月から9月にかけては、年間降水量の約7 0%が降ります。この雨期に、平均すると毎年国土の約3割が水につかり、1 0 年に一度の洪水では国土の約4割が堪水するとされています。

 そして、雨期の洪水による子どもたちは学校に通うことができず、最大で3ヶ月間教育が受けられない時があります。

[全世界] 途上国に住む障がい者の貧困

 2011年の世界保健機構(WHO)の発表によると、世界人口に占める障がい者の割合は約15%。その8割が開発途上国に住んでいるとされ、これらの人々は、教育・保健・労働などに参加する機会が保障されていないため、貧困に直面している。現在では、障がい者の人権を守るだけでなく、開発プロセスに障がい者が受益者・実施者として参加すること(障害インクルーシブな開発)の重要性が認識されている。 途上国では、重度障がい者の場合、地域の目を避けたい親が家に閉じ込めるというケースもあるので、障がい者の実態を完全に把握して、彼らの真の自立を実現するは簡単ではないという現状もある。

[インドネシア] 慢性的な貧困と格差

 インドネシアで最も貧しい地域のひとつ、スンバ島の乾燥した丘陵地では、電力もその他の動力源もないコミュニティがある。スンバ島が位置する東ヌサ・トゥンガラ州では、農業の依存度が高く、干ばつやその他の気候変動による影響をますます受けやすくなっているにも関わらず、水を安全に利用できるのは全世帯の40%にすぎません。こうした要素はいずれも、貧困率が下がらない理由になっている。

[ミャンマー] 気候変動による乾燥地帯の人々の慢性的貧困

 ミャンマーの乾燥地帯では、安全な水はとても貴重で、植生も細く、土は乾いて浸食されていて、ここに住む人々は気候変動や環境悪化に対して非常に脆弱な状況に置かれている。 日々の生計を立てることで精いっぱいであり、特に水の確保が大きな課題であり、雨が降らないと何もできない状態にある家庭では、1日$2-3で生活しているところもある。

 マグウェ地方のSin Ka in Chauk Townshipの村では、700人が利用する井戸が1つあるだけで、井戸まで徒歩20分の遠さのうえに200ℓタンクあたり$0.6のコストがかかる。10人以上の家庭では、このコストはとても重荷になっている。ミャンマーの乾燥地帯に住む土地を持たない人々は季節労働者として農業に携わり、農業の仕事がない季節は街に一時的な労働者として移り住む生活をしておる。気候変動による干ばつの影響により慢性的な貧困に陥る構造になってしまっている。

[インドネシア] トイレは綺麗でも下水は未整備

 インドネシアは経済成長目覚ましく、特に首都のジャカルタは高層ビルが立ち並び、もはや途上国という印象でない。家庭にも綺麗なトイレがあるのが普通になってきているが、その裏、つまり下水道は未整備なところが多く、地下水の水質汚染が原因の環境被害や健康被害が深刻化している。

 インドネシア全体での下水道普及率は4%と他のASEAN諸国に比べても低く、ジャカルタでさえ4%程度。政府も水質汚染対策として下水道・し尿処理設備を整えようとするものの、増え続ける人口に対して、その用地確保が確保できなかったり、水路工事の計画が立たなかったりといった困難に直面している。 また、水路工事のための建築費は高く、政府の予算の問題で下水道処理推進事業が思ったように進まない可能性が高い。さらに、今まで下水道利用に対して料金を支払っていなかった国民に対して、どのように料金を支払ってもらい、運営費を賄うかも課題である。

[アフリカ諸国] 稲作技術の向上と稲作セクターの産業化の必要性

 アフリカ諸国の都市部では、調理やしやすく栄養価が高い、コメが主食となりつつある。 2008年の「第4回アフリカ開発会議」(TICAD IV)で提唱され、JICAと「アフリカ緑の革命のための同盟」(AGRA)が中心となり、アフリカ23カ国と11の支援機関が参加して、「アフリカの稲作振興のための共同体」(CARD)が結成された。これまでの10年間で173件のプロジェクトが実施され、「コメのアフリカでの生産量倍増」という目標は達成できたが、急増するコメの消費量に追いついていない状況。例えば、セネガルでは2000年代初頭、国民1人あたりのコメの年間消費量が日本を上回る74kgだったが、コメの需給率は約20%だった。シエラレオネは、現在、国民1人あたりのコメの年間消費量が100kgを超えるが、コメの自給率は低く、年間約30万トンを輸入している。モザンビークでも半分以上を輸入米に依存している。

 また、アフリカ諸国では、稲作の機械化、大規模化などの技術面や農家の組織化などのガバナンス面で未熟な部分が多い。アジアで実現したような、稲作における官民の連携を促進するとともに、稲作セクターを産業として成り立たせる必要もある。

[全世界] プラスチック製ストローによる海の汚染

 2016年の世界経済フォーラムでは、毎年約800万トンのプラスチックのゴミが海に捨てられていると発表され、海に捨てられるゴミと聞けばペットボトルやレジ袋のイメージが強いですが、近年ではプラスチック製のストローに対する対策も注目が集まっています。実際、アメリカでは1日5億個のストローが使い捨てにされていますが、ストローはその小ささと軽さからリサイクルされず、多くが海に流れ着いてしまいます。

 そして、2015年にウミガメの鼻に10センチのストローがつまり、研究者がそれを取り除く動画が世界中で話題になり、あらためてプラスチック製のストローが海とそこに住む生物に悪影響を及ぼしていることを露わにするきっかけとなりました。

 プラスチックは漂着ごみとして景観や環境を壊すだけでなく、それを間違って摂食してしまった多くの鳥や海洋生物の命を奪っており、プラスチック製のゴミの回収は当然ながら、そもそもゴミが発生しない解決策が求められます。

[インド] 魚の需要拡大による破壊的な漁業と生態系の危機

 インドでは、6,300万の人々が沿岸部に暮らしており、その多くが沿岸部の恩恵を受けた職業(漁業や観光など)により生活している。インドの西岸に位置するSidhuburg(マハーラーシュトラ州)は、破壊的な漁業慣行により生態系のバランスが崩れ、インドの11の生態系危機地域の一つとなっている。

 現在、世界中では1950年にくらべて4倍の魚の消費があり、この消費に追いつくために、世界の漁船(インドは世界第二位の魚の生産量を誇る)は海が生産可能な2-3倍の魚の供給を求めている。

 この調子では、2050年までに熱帯地域の漁獲量は40%減少し、それに伴い何百万もの人の生活手段が脅かされることになる。

[パラオ] 観光客急増によるマングローブ群とサンゴ礁群へのダメージ

 とくに近年の中国地方政府発給の無料観光券で訪れる中国人観光客の急増(パラオに来る観光客の90%を占める)に対応するために、パラオのホテルへの投資や地元ホテルの買収が急激に進んでいる。新しいホテルが建設が進むと、強烈なスコールが起こるたびに、赤い工事土砂が海に流れ込んで、マングローブ群とサンゴ礁群に大きなダメージを与えている。

[日本] お肉を輸入する際のバーチャル・ウォーターの増加

 バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国( 消費国) において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものであり、ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏がはじめて紹介した概念です。例えば、1kg のトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800 リットルの水が必要です。また、牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kg を生産するには、その約20,000 倍もの水が必要です。つまり、日本は海外から食料を輸入することによって、その生産に必要な分だけ自国の水を使わないで済んでいるのです。しかし、食料自給率が68%(平成28年度、生産額ベース)の日本は言い換えれば、形を変えて水を大量に輸入していること言えます。

 そして、日本における肉の消費量は年々増加しており、世界的にも肉の消費が2050年までに倍増すると予想されているため、水の資料量の増加など、環境への影響はさらに悪化すると予想されます。